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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第二章/二/3 

3 公判の審理期間

 憲法第三七条は,被告人に対し迅速な裁判を受ける権利を保障し,刑事訴訟法第一条は,これをうけて,適正迅速な裁判の実現を,刑事手続の理念の一つとして掲げている。そこで,公判手続による裁判の審理期間がどうなっているかをみよう。
 昭和三六年から四一年までの六年間の起訴から通常第一審の終局までの期間を,年度ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所に分けてみると,I-51表[1][2]のとおりである。

I-51表 通常第一審事件の既済の審理期間(昭和36〜41年)

 これによると,昭和四一年における地方裁判所の通常第一審事件の終局総人員五八,〇一八人のうち,六か月以内に終局したものは,総数の八一・三%で,この比率は,例年,ほとんど大差がない。しかし,一年をこえるものが八・〇%あるのは注目される。簡易裁判所では,昭和四一年の終局総人員三八,〇七六人のうち,六か月以内に終局したものは,八九・一%となっている。また,一年をこえたものは,総数の四・六%で,地方裁判所に比べ,やや審理期間が短いといえよう。これは,地方裁判所が簡易裁判所に比し,事件の内容が複雑で,審理に時間を要することからくる当然の結果といえる。
 次に,最近六年間の控訴審と上告審における,控訴あるいは上告の時から,それぞれの終局までの審理期間の百分率をみると,I-52表およびI-53表のとおりである。

I-52表 控訴事件の既済の審理期間(昭和36〜41年)

I-53表 上告事件の既済の審理期間(昭和36〜41年)

 まず,控訴審についてみると,昭和四一年に控訴審で終局した一二,五〇二人のうち,三四・六%が三月以内に,四一・九%が三月をこえ六月以内に処理されている。上告審では,昭和四一年に終局した四,〇五二人のうち,一九・五%が三月以内に,五九・八%が三月をこえ六月以内に処理されている。上告審の審理期間で目につくのは,昭和三八年を境に,審理期間が二年をこえるものが激減していることである。
 次に,起訴から上訴審の終局までの期間をみることにしよう。まず,起訴から控訴審終局までの審理期間を,年度ごとに,百分率にしてみると,I-54表のとおりである。

I-54表 控訴事件の既済の起訴から控訴審終局までの審理期間(昭和36〜41年)

 これによると,昭和四一年に控訴審で終局した一二,五〇二人についてみると,総数の二〇・四%が六月以内に,三九・五%が六月をこえ一年以内に,二八・八%が一年をこえ三年以内に終局しているが,三年をこえるものが,一一・四%となっている。すなわち,起訴から控訴審終局までの期間が一年以内というのは,総数の約六割を占めている。
 次に,起訴から上告審の終局までの審理期間を,年度ごとに,百分率にしてみると,I-55表のとおりである。

I-55表 上告事件の既済の起訴から上告審終局までの審理期間(昭和36〜41年)

 昭和四一年に,上告審で終局した四,〇五二人のうち,起訴から上告審の終局までの審理期問が一年以内のものは,総数の一五・六%,一年をこえ二年以内のものは四六・二%,二年をこえ三年以内が一九・〇%で,三年をこえるものが一九・三%となっている。すなわち,約六割が二年以内に終局していることになるが,総数の約一割が,終局するまでに五年以上かかっているのは,問題といえよう。