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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第二章/二/2 

2 起訴後の勾留と保釈

 裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,被告人が定まった住居を有しないとき,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき,あるいは,逃亡しまたは逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,これを勾留することができる。その勾留期間は,公訴提起の日から二か月間であるが,特に継続して勾留する必要がある場合は,一か月ごとに更新することができる。しかし,特定の場合(必要的保釈除外事由にあたる場合)以外は,この更新は,一回に限られている。
 最近五年間の,各年末現在における,勾留中の被告人の数と,その勾留期間とを比率で示すと,I-48表のとおりである。これによると,昭和四一年末現在で勾留中の総人員は一〇,八一二人で,このうち勾留期間が二か月以内の者は六一・三%である。これに三か月以内の者を加えると,七三・〇%となり,残りの二七・〇%の者が,例外的に三ヵ月をこえる勾留を受けたことになるが,長期の勾留,たとえば勾留期間が一年をこえる者が,四・二%となっている。なお,この数字は,毎年,ほとんど大差がない。

I-48表 年末現在勾留中の者の勾留期間別人員と比率(昭和37〜41年)

 次に,保釈についてみる。勾留されている被告人は,保釈によって,一定の条件のもとに釈放される。保釈には,保釈の請求があったとき,必ず保釈を許可しなければならないもの(必要的保釈あるいは権利保釈という。)と,必要的保釈には該当しないが,裁判所が適当と認めた場合に保釈を許す裁量保釈および保釈の請求はないが,裁判所の職権により保釈を許す職権保釈,さらに,勾留による拘禁が不当に長くなったときなされる刑事訴訟法第九一条による保釈がある。
 昭和三七年から四一年までの五年間に,通常第一審で終局した被告人のうち,起訴時に勾留中であった者および第一審終局までに保釈によって釈放された者などの状況をみると,I-49表のとおりである。これによると,昭和四一年に通常第一審で終局した九六,〇九四人のうち,起訴時に勾留中であった者が,七〇・〇%にあたる六七,二二七人で,そのうちの三四・八%の二三,三八六人が,保釈によって釈放されている。

I-49表 通常第一審終局被告人の保釈状況(昭和37〜41年)

 保釈されるためには,保釈保証金を納付しなければならない。この保証金額は,犯罪の性質および情状,証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産を考慮して,被告人の出頭を保証するに足りるように裁判所が決めるのである。昭和三七年から昭和四一年までの五年間の,通常第一審で終局した被告人につき,保釈保証金の金額別の分布をみると,I-50表のとおりである。

I-50表 保釈保証金額別比率(昭和37〜41年)

 これによると,昭和四一年で最も多いのが,五万円以上一〇万円未満で,総数の三九・八%を占めている。ついで,一〇万円以上五〇万円未満が三九・二%,一万円以上五万円未満が一八・八%となっている。なお,この表で目につくのは,逐年比較的低額のものが減少し,高額のものが増加していることである。一〇万円未満の保証金の率は,昭和三七年には総数の九一・二%であったが,昭和四一年には五九・二%に減少している。