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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第二章/一/2 

2 被疑者の逮捕と勾留

 捜査は,任意捜査を原則とし,強制捜査は,法律の定める条件の存する場合に限って,行なうことができる。強制捜査には,捜索・差押・検証等もあるが,重要なものは,被疑者の身体を拘束する逮捕と勾留である。
 まず,最近五年間における刑法犯と特別法犯とについて,検察庁の既済人員のうち,逮捕された者および勾留された者の各人員数が占める割合をみると,I-37表のとおりである。これによると,逮捕された者および勾留された者の割合は,逐年減少の傾向にある。昭和四二年についてみると,既済総人員一,一五三,九四二人のうち,逮捕された者は,その一五・九%にあたる一八三,四八〇人である。すなわち,約八四%の者が逮捕されず,いわゆる在宅事件として処理されている。この逮捕された者のうち,逮捕後警察で釈放された者は,一八,六九八人で,警察における逮捕者総数の一〇・三%にあたり,残る八九・七%は,逮捕されたまま検察庁に送致されている。なお,検察庁ではじめて逮捕された者もあるが,その数は少なく,一,一九一人にすぎない。

I-37表 刑法犯・特別法犯の逮捕勾留別人員(昭和38〜42年)

 検察官が身柄を拘束された被疑者を受理した後の,身柄の取扱い方法は,勾留請求,逮捕中公判請求,家庭裁判所送致,釈放などがある。昭和四二年中に,検察官が勾留請求をした者の数は,一〇七,七四五人で,その結果,勾留された者の数は,一〇五,五五九人である。勾留請求が却下された者は,二,一八六人で,却下率は,請求総数の二・〇%にあたる。なお,検察官が釈放した人員数は,三八,〇八八人で,検察官が身柄事件として受理した事件のうちの二三・一%にあたる。
 勾留された者が,その後どのような処分を受けたかを,昭和四二年の統計によって調べてみると,I-38表のとおりで,検察官の起訴した者が六八・四%,起訴猶予一六・一%,家庭裁判所送致一一・五%,嫌疑不十分などの理由で不起訴となった者が三・七%,中止処分が〇・三%となっている。

I-38表 勾留被疑者の処分別人員(昭和42年)

 次に,勾留された被疑者が,どの程度の期間勾留されているかについて,期間を五日ごとに区分して百分率をみるとI-39表のとおりである。勾留された者のうち,八一・七%が,一〇日の勾留期間内に処理され,残る一八・三%が,勾留期間を延長されている。なお,この表で,二〇日をこえる者が三二四人いるが,これは,同一被疑者が,他の事件で引き続き勾留され,前の期間と合計して二〇日をこえることとなった例外的なものである。

I-39表 被疑者勾留期間別人員(昭和42年)