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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第一章/二/4 

4 性犯罪

 性犯罪のうち,わいせつ文書の頒布等は,強姦や強制わいせつなどとは,多少性質を異にするものではあるが,統計資料の都合から,いちおう,性犯罪として取り扱うこととした。
 I-16表およびI-17表は,性犯罪の発生件数と検挙人員を示すものである。強姦は,発生件数,検挙人員ともに,最近一,二年間は,きわめてわずかずつ,減少する傾向を示しているが,これを一〇年前の昭和三二年と比較すると,五割前後の増加となっている。わが国においては,性犯罪が,昭和三三年に,劇的な急増を示し,その後,今日に至るまで,一〇年間にわたって,多少の起伏はありながら,高い水準を維持し続けていることが,特異な犯罪現象の一つとなっている。I-18表は,試みに,昭和三〇年以降,強姦罪で検挙された者と,その中で,暴力団体関係者の占めている比率とを示したものであるが,検挙人員の急増した昭和三三年を境として,右の比率は,減少の一途をたどり,ことに,最近二年間に,急減していることが注目される。この傾向が,強姦犯人の一般市民化ともいうべき現象を示唆するものであるとすれば,今後の検討を要するところと思われる。

I-16表 性犯罪発生件数(昭和32,38〜42年)

I-17表 性犯罪検挙人員(昭和32,38〜42年)

I-18表 強姦罪の検挙人員中暴力団関係者の占める割合(昭和30〜42年)

 強制わいせつ,公然わいせつおよびわいせつ文書頒布等の発生件数は,逐年増加の一途をたどり,昭和四二年には,戦後最高の数字を示している。検挙人員は,昭和四一年から四二年にかけて,わずわに減少しているが,検挙件数は,逆に,前年より四七二件増加して,発生件数と同じく,戦後最高の数字となっている。結局,検挙人員の減少は,公然わいせつおよびわいせつ文書頒布等の罪について,一人で数件を犯す常習者が増加していることによるものと考えられ,この種犯罪の減少を示すものとは思われない。検察統計により性犯罪の罪名別新規受理人員をみたのが,I-19表である。これによると,強制わいせつが,逐年増加の傾向を示し,強姦,公然わいせつ,わいせつ文書頒布等は,昭和四一年から四二年にかけて,わずかに減少しているが,最近五年間,あるいは一〇年前の数字と比較して,なお,高い水準にあると言わざるをえない。

I-19表 性犯罪罪名別検察庁新規受理人員(昭和32,38〜42年)