前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和7年版 犯罪白書 第7編/第6章/第3節/2

2 特別調査<2>(精神障害を有する者等の性犯罪被害)

精神障害を有する性犯罪被害者(本特別調査の「精神障害あり群」に該当する調査対象被害者をいう。以下同じ。)は、精神障害の種類等を調査した結果、7割以上が知的障害に該当しており、2割程度が発達障害に該当していた(重複計上による。)。他方、統合失調症等のいわゆる狭義の精神障害に該当する者はごく一部にとどまった。したがって、本章では、精神障害を有する性犯罪被害者の精神障害の種別としては、主に知的障害及び発達障害を念頭に置いている。

(1)精神障害を有する性犯罪被害者等が経験した被害の状況等
ア 精神障害を有する性犯罪被害者における特徴等

精神障害を有する性犯罪被害者については、6割以上が、被害当時、施設又は特別支援学校等へ通所・通学していたことから、日常的に、日中、家族や住居から離れる時間がある状況がうかがえたところ、被害の場所を見ると、学校、就労先、療養所、デイケア施設等の屋内が最も多かったほか、精神障害なし群と比べると、自動車や送迎バス等の公共交通機関以外の乗り物内が被害場所となる割合が高いなどの特徴が認められた。

犯行時間帯を見ると、夕方や昼過ぎの時間帯に被害が多く見られ、施設等から帰宅する時間帯との関連がうかがえた。

精神障害あり群に対する事件について、被害者から見た加害者の立場を見ると、支援関係者が最も多く、面識がない者や知人は支援関係者よりも少ないという特徴が認められた。事件の加害者の年齢を見ると、65歳以上の高齢者層が多く、精神障害なし群と比べると、20~30歳代の比較的若い年齢層が加害者となる割合が低いという傾向がうかがえた。

イ 精神障害を有しない性犯罪被害者における特徴等

精神障害を有しない性犯罪被害者(本特別調査の「精神障害なし群」に該当する調査対象被害者をいう。以下同じ。)については、9割以上が、被害当時、学生又は有職であり、自宅に居住していたところ、被害の場所を見ると、屋外における被害が最も多く、5割程度であった。

犯行時間帯を見ると、夜中の時間帯における被害が特に多く、夕方頃の時間帯における被害も比較的多く見られた。

精神障害なし群に対する事件について、被害者から見た加害者の立場を見ると、面識がない者が最も多く、約6割に達しており、事件の加害者の年齢を見ると、20~30歳代等の比較的若い年齢層が多かった。

ウ 共通して認められた特徴等

精神障害あり群及び精神障害なし群に共通して認められた性犯罪被害者の特徴等を見ると、被害者の性別は、多くは女性であったが、1割前後は男性であった。加害者の前歴を見ると、前歴がない者が最も多く、約6割に達しており、同種前歴がある者は1~2割程度であった。もっとも、異種前歴がある者を含めると、加害者の4割程度に何らかの前歴があった。

(2)精神障害を有する性犯罪被害者等の被害認識、被害申告・犯行発覚の経緯等
ア 被害当時の被害認識における特徴等

精神障害を有する性犯罪被害者について、被害当時の被害認識を見ると、被害認識がある者は4割弱にとどまっていた。そして、精神障害なし群と比べると、加害者から行われた行為について、その行為自体を認識できていなかったり、その行為の意味内容をほとんど理解できていなかったり、あるいは、何らかの違和感や不快感等を伴う行為をされたことは認識しているものの、それが犯罪行為の被害であることまで明確に認識できていなかったりする傾向が見られ、被害認識が全くなかったか、十分でなかった。さらに、年齢別に被害認識を見た場合、20歳未満のどの年齢でも、被害認識が全くなかったか、十分でなかった者が一定数おり、被害認識と特定の年齢との関係性は必ずしも明確ではないという特徴が認められた。

精神障害を有しない性犯罪被害者については、その8割程度が被害認識を有していたところ、年齢別に被害認識を見た場合、15歳以上になると、全員が加害者から犯罪行為の被害を受けたことを認識できているという特徴が認められ、被害当時の被害認識において、明確な年齢による差が認められた。

イ 犯行日から捜査機関への犯行発覚までの期間における特徴等

精神障害を有する性犯罪被害者について、犯行日から捜査機関への犯行発覚までの期間を見ると、被害当日又は翌日までの犯行発覚は4割弱にとどまっていた。そして、精神障害なし群と比べると、1か月以上の長期間を要する者が多い傾向が見られた上、犯行発覚まで1年を超える場合も1割以上あった。この点、調査対象事件の中には、同一被害者に対して複数の犯行がなされた事例が相応にあること、精神障害あり群では、余罪(判決書では認定されていない同一被害者に対する複数の犯行)に関する供述がある者が5割を超えていたことなども併せて考えると、本件被害が発覚するまでの間に、当該加害者が同一被害者に対して複数の犯行を繰り返しているケースが多いという可能性が示唆された。

精神障害を有しない性犯罪被害者については、被害当日又は翌日までの犯行発覚が7割程度であったが、1か月以上の長期間を要する場合も2割程度あった。

ウ 被害申告ないし捜査機関への犯行発覚の経緯等における特徴等

精神障害を有する性犯罪被害者について、被害申告ないし捜査機関への犯行発覚の経緯等を見ると、最初に被害を伝えた相手は、ほとんどが捜査機関ではなく、親族や、学校・勤務先・支援関係者等の被害者の身近な者であることが多かった。前記のとおり、犯行発覚まで長期間を要する傾向が見られたことなどを踏まえると、被害者から最初に被害を伝えられたこれらの相手方が、事実確認等のために内部的な聞き取りを実施するなどしている間に、捜査機関への犯行発覚が遅れるという可能性が推察された。また、被害者による被害申告の有無を見ると、そもそも被害申告がない場合も多く、3割を超えていた。

精神障害を有しない性犯罪被害者は、その9割以上が被害申告をしていたところ、最初に被害を伝えた相手は、精神障害あり群と比べると、捜査機関の割合が高かった。