第2編第2章第4節においては、検察官が行う不起訴処分のうち、起訴猶予率の推移を見ているところ、本項においては、起訴人員及び不起訴人員の合計に占める不起訴人員全体の比率(以下この項において「不起訴率」という。)の推移を見ることとし、更に罪名別の比較を行う。また、検察官は、被疑者がその行為者であることにつき、又はその行為が犯罪に当たることにつき、これを認定すべき証拠が不十分なときには、嫌疑不十分による不起訴処分とするところ、本項においては、起訴人員及び不起訴人員の合計に占める嫌疑不十分人員の比率(以下この項において「嫌疑不十分率」という。)の推移について見た上で、更に罪名による傾向・特徴の違いについて見る。なお、不同意性交等及び不同意わいせつの不起訴率・嫌疑不十分率の推移を見るに当たっては、平成29年法律第72号による改正(平成29年7月施行)により、従来の強姦が強制性交等に改められ、従来の強制わいせつの処罰対象の一部が強制性交等の処罰対象となり、従来の強姦及び強制わいせつは親告罪であったが、強制性交等及び強制わいせつは非親告罪とされたこと及び監護者性交等・監護者わいせつが新設されたこと並びに令和5年法律第66号による改正(令和5年7月施行)により、強制性交等及び強制わいせつの構成要件が変更されて、それぞれ不同意性交等及び不同意わいせつとなったことに留意が必要である(法改正の詳細については、第1編第1章第2節4項参照)。
不起訴率の推移(最近20年間)について、罪名別に見ると、7-2-2-4図<1>のとおりである。平成17年は、高い順に、器物損壊の不起訴率が70%台、窃盗の不起訴率、暴行の不起訴率及び脅迫の不起訴率が50%台、不同意わいせつの不起訴率が40%台、不同意性交等の不起訴率及び詐欺の不起訴率が30%台、配偶者暴力防止法違反の不起訴率が20%台、ストーカー規制法違反の不起訴率が10%台であった。
器物損壊の不起訴率は、平成18年以降も罪名別で最も高く、29年の80%強を除き、70%台で推移している。
窃盗の不起訴率は、平成18年及び19年は60%台であったが、20年以降は50%台で横ばいとなり、同年以降暴行罪の不起訴率を、26年以降不同意性交等の不起訴率を、28年以降不同意わいせつの不起訴率を、それぞれ連続して下回った。
暴行の不起訴率は、平成19年以降上昇傾向にあり、20年に窃盗の不起訴率を上回ると、以後一貫して器物損壊の不起訴率に次ぐ高さにあり、28年以降70%台で推移している。
不同意性交等の不起訴率は、平成18年以降上昇傾向にあり、21年に50%、26年に60%を超え、不同意わいせつの不起訴率が60%に達した29年以降は、脅迫の不起訴率及び不同意わいせつの不起訴率と並んで60%台で推移しており、不同意わいせつの不起訴率、脅迫の不起訴率及び不同意性交等の不起訴率は、器物損壊の不起訴率及び暴行の不起訴率に次ぐ高さとなった。
詐欺の不起訴率は、平成23年に約45%となって以降おおむね40%台で推移し、配偶者暴力防止法違反の不起訴率は、20年以降おおむね20~40%台で上昇低下を繰り返し、ストーカー規制法違反の不起訴率は、28年に40%を超えて以降おおむね40%台で推移し、これらの罪名の不起訴率がこれら以外の罪名の不起訴率を上回ることはなかった。
嫌疑不十分率の推移(最近20年間)について、罪名別に見ると、7-2-2-4図<2>のとおりである。平成17年は、高い順に、窃盗の嫌疑不十分率が20%台、不同意性交等の嫌疑不十分率、脅迫の嫌疑不十分率及び器物損壊の嫌疑不十分率が10%台、不同意わいせつの嫌疑不十分率、詐欺の嫌疑不十分率、ストーカー規制法違反の嫌疑不十分率、暴行の嫌疑不十分率及び配偶者暴力防止法違反の嫌疑不十分率が10%未満であった。
窃盗の嫌疑不十分率は、平成19年までは罪名別で最も高かったが、20年以降不同意性交等の嫌疑不十分率を、21年以降脅迫の嫌疑不十分率を、23年以降詐欺の嫌疑不十分率を、25年以降不同意わいせつの嫌疑不十分率を、27年以降器物損壊の嫌疑不十分率を、それぞれ連続して下回った。
不同意性交等の嫌疑不十分率は、平成20年以降一貫して他の罪名よりも高く、22年及び28年には30%を超え、29年以降おおむね40%を超えて推移している。
脅迫及び器物損壊の嫌疑不十分率は、平成17年以降おおむね10%台で推移し、28年以降は、おおむね不同意性交等の嫌疑不十分率、不同意わいせつの嫌疑不十分率及び詐欺の嫌疑不十分率に次ぐ高さで推移している。
不同意わいせつの嫌疑不十分率は、平成29年に20%を超え、詐欺の嫌疑不十分率を上回ると、以降一貫して20%台で推移し、不同意性交等の嫌疑不十分率に次ぐ高さとなり、30年以降は詐欺の嫌疑不十分率との差が6~12%台であった。
ストーカー規制法違反の嫌疑不十分率、暴行の嫌疑不十分率及び配偶者暴力防止法違反の嫌疑不十分率は、他の罪名の嫌疑不十分率よりもおおむね低い水準で推移している。
近年における罪名別の嫌疑不十分率を罪名別の不起訴率との比較で見ると、不同意性交等及び不同意わいせつは、不起訴率では、器物損壊及び暴行を下回っているが、嫌疑不十分率では、これらを含めた他の罪名よりも大幅に高く、取り分け不同意性交等の嫌疑不十分率が高い。一方、器物損壊及び暴行は、不起訴率では、平成20年以降一貫して他の罪名よりも高いものの、嫌疑不十分率では、不同意性交等及び不同意わいせつを除く他の罪名と同程度又はこれら他の罪名よりも低い傾向にあり、多くの人員が嫌疑不十分以外の理由で不起訴とされていることがうかがわれる。