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令和7年版 犯罪白書 第4編/第5章/第3節/コラム3

コラム3 インターネットと犯罪

現在では、インターネットが広く普及し、多くの個人に利用されているが、そこで提供されている技術・サービスの中には、犯罪の実行の各段階において、犯罪インフラとして悪用されているものもある。

匿名・流動型犯罪グループ(本編第3章第2節1項参照)は、SNSを悪用しており、SNSを通じるなどしてメンバー同士が緩やかに結び付いており、実行犯の募集の段階では、SNSを用いて、「ホワイト案件」等の表現を用いたり、仕事の内容を明らかにせずに著しく高額な報酬の支払を示唆するなどして、実行犯を募集している。特殊詐欺等の犯罪を敢行する段階では、首謀者、指示役、実行役の間の連絡手段として、<1>通信が暗号化されており、送信者と受信者以外はメッセージを確認できず、<2>設定した時間でメッセージを自動的に消去できる機能を備えているといった、匿名性の高いメッセージングアプリを使用するなどしている(警察庁サイバー警察局の資料による。)。

暗号資産は、利用者の匿名性が高く、その移転がサイバー空間において瞬時に行われるという性質から、犯罪の実行の段階のみならず犯罪収益等の隠匿の段階でも悪用されており、本文で述べたとおり、SNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺における資金洗浄(マネー・ローンダリング)にも用いられている。

SNS型ロマンス詐欺における主な被害金等交付形態には、インターネットバンキングにより被害金を振り込ませる形態や、指定した暗号資産アドレスに被害者が元々保有していた又は犯人の指示で購入し保有した暗号資産を送信させる形態があるところ、その推移(令和6年1月から7年6月まで)は、図4のとおりである。6年1月から7年1月までの間は、インターネットバンキングによる形態が暗号資産による形態を上回っていたが、同年2月には、暗号資産による形態が120件(SNS型ロマンス詐欺全体の31.8%)となり、インターネットバンキングによる形態の117件(同31.0%)を上回るに至った(警察庁刑事局の資料による。)。インターネットバンキングに係る不正送金を実行した後の資金洗浄・現金化の段階では、いわゆる「出し子」がATMから現金を引き出すという従来の手口に代わり、暗号資産に変える手口が主流となっている。6年におけるインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生件数は4,369件、被害総額は約86.9億円であったが、そのうちの約32.1億円(36.9%)が暗号資産交換業者名義の金融機関口座へ送金されており、送金後は、そのほとんどが暗号資産に変えられているものと考えられている(警察庁サイバー警察局の資料による。)。

こうした事態を背景とし、令和7年4月に犯罪対策閣僚会議が決定した「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」においては、各種サービスの不正利用を防止するため、SNS事業者に対し、アカウント開設時の本人確認の厳格化を含む措置の検討を働き掛けること、SNS事業者及び雇用仲介業者における犯罪実行者募集情報の削除及び掲載防止等の取組を促進すること、被害を未然に防止し、被害の拡大を防止するため、暗号資産交換業者に対し、顧客の依頼により暗号資産を送金した後も当該送金に係る取引の流れを適切にモニタリングするなど、取引モニタリングの強化を要請することなどが盛り込まれており、民間事業者等とも連携・協力しながら各種施策を一層強力に推進することとされている。

図4 SNS 型ロマンス詐欺 主な被害金等交付形態の推移
図4 SNS 型ロマンス詐欺 主な被害金等交付形態の推移