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令和6年版 犯罪白書 第7編/第4章/第2節/2

2 更生保護施設

7-4-2-2図は、全国の更生保護施設の所在地を男女別に見たものである。令和6年4月1日現在、全国に102施設があるが、そのうち女性の施設7、男女施設8である(第2編第5章第6節2項参照)。また、全国の更生保護施設のうち、25施設が薬物処遇重点実施更生保護施設として指定されているところ(第2編第5章第6節2項参照)、そのうち女性の施設4、男女施設3である。さらに、全国の更生保護施設のうち、77施設が特別処遇を実施する指定更生保護施設として指定されているところ(第2編第5章第6節2項参照)、そのうち女性の施設6、男女施設8である。なお、平成29年度から、女性を受け入れる更生保護施設においては職員を1人増配置し、女性の特性に配慮した指導・支援を推進している。例えば、薬物処遇重点実施更生保護施設として指定され、かつ特別処遇を実施する指定更生保護施設としても指定されている更生保護施設栃木明徳会は、女性20名を入所定員とする施設であるところ、同会では、薬物再乱用防止プログラム及び簡易薬物検出検査のほか、女性の特性に配慮した指導・支援として、寺院住職による法話、作業療法士によるコミュニケーションワーク、更生保護女性会による料理作り等を実施している。また、更生保護施設栃木明徳会では、入所者のうち精神疾患を有する者については、近隣の病院を受診させるなどしてその服薬管理も行っている。加えて、同会においては、平成29年度のフォローアップ事業や令和3年度の訪問支援事業が開始される前から、施設職員が退所者の居宅等の訪問をするなどの施設退所後の支援も行っている(フォローアップ事業及び訪問支援事業については、第2編第5章第6節2項参照)。このほか、女性の更生保護施設の一部では、定期的に、民間の薬物依存症リハビリテーション施設の女性スタッフを招き、薬物依存からの回復について実体験を交えての助言を受ける機会を設けているほか、更生保護施設職員が司会となって、様々な依存症や嗜癖問題についてのミーティングを実施し、あるいは精神科医師、保健師、臨床心理士、弁護士、産婦人科医師等を招くなどして、女性の特性に配慮し、心身の健康を維持していくための講義を実施している。

7-4-2-2図 更生保護施設の所在地(男女別)
7-4-2-2図 更生保護施設の所在地(男女別)

保護観察開始時における更生保護施設等(更生保護施設及び更生保護施設以外の委託先(自立準備ホームなど))の居住人員の推移(最近10年間)を男女別に見ると、7-4-2-3図のとおりである。居住人員の多くは仮釈放者であり、令和5年は、女性の居住人員のうち仮釈放者の比率は95.2%、男性の居住人員のうち仮釈放者の比率は93.4%である。

7-4-2-3図 保護観察開始時における更生保護施設等の居住人員の推移(男女別)
7-4-2-3図 保護観察開始時における更生保護施設等の居住人員の推移(男女別)
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令和5年における更生緊急保護による宿泊供与の委託終了者について、更生保護施設等入所回数、入所事由、宿泊保護日数及び委託終了事由を男女別に見ると、7-4-2-4表のとおりである。更生保護施設等入所事由について見ると、「親族が引受けを拒否」及び「親族と同居を望まず」の構成比は、女性は男性よりも高く(それぞれ女性が13.2%、8.2%、男性が7.0%、7.6%)、「頼るべき親族なし」の構成比は、女性よりも男性の方が高い(女性が75.9%、男性が81.3%)。また、委託終了事由について見ると、「自立」及び「勧告・無断・事故退所」の構成比は、女性よりも男性の方が高く(それぞれ女性が55.0%、8.6%、男性が55.9%、13.2%)、「福祉施設等へ」の構成比は、女性は男性よりも高い(女性17.3%、男性12.5%)。

7-4-2-4表 更生緊急保護による宿泊供与の委託終了者の状況(男女別)
7-4-2-4表 更生緊急保護による宿泊供与の委託終了者の状況(男女別)
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女性の保護観察対象者又は更生緊急保護対象者(以下この節において「保護観察対象者等」という。)が更生保護施設から自立する場合、様々な問題が生じることがある。例えば、刑事施設で取得した資格を生かすことができる介護職などは、更生保護施設が現住所になっていると雇用されにくいなどの実情があるほか、保護観察対象者等の女性は、男性と比べて就労先が限られるなどの理由から、就労先が決まるまでに時間がかかることもある。また、保護観察対象者等が自立するための住居を借りる際、保証人がいないために賃貸契約の締結ができないという問題もある。さらに、女性の保護観察対象者等の中には、家族との関係が絶たれており、子供がいたとしても疎遠になっているため、子供との関わりを持てない者もいる。

このように、女性の保護観察対象者等については、就労や自立を困難にする事情がある場合や退所後に頼ることのできる家族等がいない場合もあることから、とりわけそのフォローアップも重要になってくる。法務総合研究所が令和5年2月に実施した更生保護施設の職員からの聞き取り調査では「女性の保護観察対象者等の社会復帰における課題は、孤独・孤立をいかに防ぐかである。」との指摘があった。