平成4年版犯罪白書では、特集として「女子と犯罪」を取り上げ、我が国の女性による犯罪の動向及び女性犯罪者に対する処遇の実情を報告するとともに、女性による犯罪の増加と女性の社会進出との関連を否定し、女性による犯罪の大半は、女性の社会進出が進む以前と変わらない犯罪類型であることを明らかにした。かつては、女性の社会進出の進行に伴い、犯罪も男性並みになるのではないかと推測されていたが、実際には、近年のより一層の女性の社会的活躍の中でも、女性による犯罪の動向は、著しい変化を見せるには至っていない。
もっとも、平成22年には女性入所受刑者の人員が4年の約2.4倍となり、女性の再入者の人員も12年から増加傾向にあったことなどから、平成25年版犯罪白書では、特集として「女子の犯罪・非行」を取り上げた。同特集では、女性受刑者の中でも多くの割合を占める窃盗事犯者及び覚醒剤事犯者に焦点を当て、窃盗事犯者については、女性特有の問題の存在がうかがわれることからこれを解明していく必要があると指摘し、覚醒剤事犯者についても、特性に応じた処遇が重要であり、当時、試行されていた薬物依存回復プログラム等の着実な実施と効果検証の重要性を指摘した上で、過剰収容が続く女性刑事施設の状況を踏まえ、民間の支援・助力を最大限に活用するとともに、施設の拡充を含む処遇体制の充実・強化を図るべきであると指摘した。
近年においては、本編第1章でも述べたとおり、女性入所受刑者について、その人員は減少傾向にある一方、女性入所受刑者総数に占める窃盗事犯者の割合は上昇傾向にあり、65歳以上の高齢者の割合も上昇傾向にあるなど、女性刑事施設における状況は更に変化している。このように、女性犯罪者については、その時代ごとに問題とされる点が異なることから、今後の女性犯罪者の再犯防止や円滑な社会復帰のための方策を考えるに当たっては、近年の女性犯罪者をめぐる刑事政策の動向や、社会における一般的な生活状況についても知る必要がある。
そこで、この章では、まず近年の女性犯罪者をめぐる刑事政策の動向について見た後、近年の社会生活の状況について概観する。