令和5年(2023年)は日ASEAN友好協力50周年という重要な節目に当たり、また、G7との関係では我が国が議長国という地位にあったことから、法務省では、ASEAN、G7双方との連携を強化して司法外交を展開するべく、同年7月に、東京において、<1>日ASEAN特別法務大臣会合、<2>ASEAN・G7法務大臣特別対話、<3>G7司法大臣会合の三つの閣僚級会合からなる司法外交閣僚フォーラムを開催した。現在、各国及び関係機関と協力しながら、それぞれの会合の成果に基づく取組を着実に実施している。
日ASEAN特別法務大臣会合では、共同声明が採択され、具体的な協力分野を取りまとめた日ASEAN法務・司法ワークプランが承認された。法務省では、令和6年(2024年)9月現在、このワークプランに掲げられた取組をASEANと協力しながら進めている。例えば、ASEAN諸国等から留学している法律実務家等を対象とした共同研究事業を前記ワークプランに基づき実施することとし、同年8月から9月にかけて、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア等の10か国、15人の留学生を集めてビジネスと人権に関する日ASEAN等共同研究(Joint Study on Business and Human Rights for Young Leaders)を実施した。また、同年11月には、ASEANの知的財産分野の実務家による情報共有を目的として、国際知財司法シンポジウム(JSIP)フォローアップセミナーをインドネシアにおいて開催する予定であるほか、同年12月には、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)により、ASEAN各国等の捜査共助と犯罪者処遇等の能力構築のため、刑事司法実務家等を対象とする「第1回日ASEAN刑事司法セミナー」を日本において開催する予定である。
ASEANとG7の法務閣僚等が一堂に会する史上初の機会となったASEAN・G7法務大臣特別対話では、今後もASEANとG7との間で対話を継続していくことで一致した。そして、我が国の提案により、ASEANとG7の法務・司法分野の次世代を担う若手職員(ネクストリーダーズ)を対象とし、対話を通じた相互理解と信頼関係の構築を目的としたASEAN・G7ネクスト・リーダーズ・フォーラムを創設することが合意された。
同フォーラムの第1回目を令和6年(2024年)6月26日から同年7月2日まで東京において開催し、ASEAN及びG7各国の法務省等の若手職員55名が参加した。参加者は、各国が抱える政策的課題についての意見交換や法の支配に関する各国共通の課題についての協議を行ったほか、ASEAN及びG7の法務・司法分野等のリーダーによる講演や、矯正施設や更生保護施設、最高裁判所等の我が国の司法関連施設の見学を行った。同フォーラムは、地域や社会的背景、制度的背景の違いを超えて、参加者の相互理解を深め、法務・司法の分野で、ASEAN及びG7各国との間に良好な架け橋を築くための礎となることが期待される。
G7司法大臣会合では、議題の一つとして、司法インフラ整備等を通じたウクライナ復興支援等について議論し、その中で、ウクライナにとって長年の懸案である汚職対策を支援することが同国のより良い国作りと復興にとって不可欠であるとの認識が共有された。そこで、我が国からウクライナ汚職対策タスクフォースを創設することを提案し、G7各国の賛同を得た。
ウクライナ汚職対策タスクフォースは、G7、ウクライナ、国際機関等の汚職対策の専門家の間で、ウクライナの汚職対策の現状と課題、各国・機関によるウクライナに対する汚職対策の取組や支援の状況、ウクライナにおける支援ニーズ等について情報を共有し、効果的な支援策を議論する場であり、我が国が事務局を務めている。
令和5年(2023年)12月に東京において第1回会合を開催し、ウクライナから5名の汚職対策の専門家が来日したほか、G7及び国際機関の汚職対策の専門家等が多数オンライン参加し、タスクフォースの活動方針等を確認するとともに、ウクライナにおける汚職対策に関する取組の現状把握を行った。令和6年(2024年)3月には、第2回会合をオンラインにより開催し、ウクライナの汚職対策に関する最新の状況の報告や、新たに第2回から参加した国際機関による支援状況の共有等を行った。
同年11月には、第3回会合を東京において開催する予定であり、同会合では、これまでに蓄積した情報を一元的に集積・分析することを通じて、効果的な汚職対策支援の在り方を議論し、G7の力を結集してウクライナに対する支援を策定・実施していく予定である。