我が国は、京都コングレスで採択された「京都宣言」の実施にリーダーシップを発揮すべく、「国際協力の促進のための各地域における実務家ネットワークの創設」、「刑事司法分野における次世代を担う若者の育成」及び「世界各国における再犯防止の推進」の三つを柱とした取組を積極的に進め、法の支配に裏打ちされた新たな国際秩序形成を主導している。
京都宣言では、国際協力及び法執行機関等を対象とした地域ネットワーク構築等の重要性が確認された。もっとも、我が国が属するアジア太平洋地域においては、捜査共助の制度・運用に対する各国相互の理解不足等により、同分野における国際協力にはなお改善の余地があるほか、我が国が積極的に進めている東南アジア諸国における刑事司法分野の技術支援についても、効率的な国際協力を推進するため、他の支援国との情報共有や意見交換をすることが有効である。
そこで、法務省は、アジア太平洋地域における刑事司法実務家による情報共有課題解決型プラットフォームとして国連薬物・犯罪事務所(UNODC)との共催で「アジア太平洋刑事司法フォーラム(英語名:Criminal Justice Forum for Asia and the Pacific 略称:Crim-AP)」を定期開催することとし、各国の刑事司法実務家による相互理解・信頼を促進し、知見を共有することなどにより、アジア太平洋地域における一層の国際協力を進めている。
令和4年(2022年)2月14日及び同月15日に第1回を、令和5年(2023年)2月13日及び同月14日に第2回を、令和6年(2024年)6月24日及び同月25日に第3回を、いずれも東京において開催した。
第3回は、23の国・機関から刑事司法実務家の参加があった(来場参加とオンライン参加のハイブリッド方式)。
参加者は、捜査共助と矯正・保護分野の国際協力に関する二つの分科会に分かれ、「資産回復(凍結・没収・管理・返還)」、「刑務所における女性犯罪者の処遇に係る課題及び進展」のテーマの下、情報共有や意見交換を行った。
令和3年(2021年)2月に実施された京都コングレス・ユースフォーラムでは、安全・安心な社会の実現に向けた40項目の勧告が採択され、京都コングレスに提出された。同勧告は、京都コングレスの議論に若者ならではの新鮮な視点を提供するものであり、各国から高い評価の声が寄せられた。また、京都宣言では、ユースフォーラムの開催などを通じた若者のエンパワーメントの重要性が指摘された。
そこで、法務省では、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)の協力の下、「法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム」を定期開催することとした。「法遵守の文化」とは、国民が、一般に、法及びその執行が公正・公平であると信頼し、それゆえこれらを尊重する文化をいい、法の支配を支えるものである。法務省は、同ユースフォーラムが、若者において法の支配や司法をめぐる現代の課題に関する理解を深め、互いのバックグラウンドや価値観を理解・共有し、多様性を許容してネットワークや友情を育む場となるよう、また、若者の声を国連に届けることができる場となるよう努めている。
令和3年(2021年)10月9日及び同月10日に東京において第1回を、令和4年(2022年)12月3日及び同月4日に京都において第2回を、それぞれ開催した。
また、令和5年(2023年)7月5日及び同月6日には、司法外交閣僚フォーラムの開催に併せて、タイ法務研究所(TIJ)との共催で、東京において、日本とASEAN各国等の若者が法の支配について議論する「法の支配推進のための日ASEAN特別ユースフォーラム」を開催した。日本、ASEAN加盟国及び東ティモールから60名以上の若者が会場に集まり、「司法へのアクセスを強化するためのリテラシーの構築-デジタル時代における法の支配への鍵-」をテーマとして、活発で実りある議論が行われた。議論の成果は「勧告」として取りまとめられ、日ASEAN特別法務大臣会合に提出されたほか、同年9月に開催された国連犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)にも提出され、ユースフォーラムの共同議長によるスピーチが行われた。
京都宣言では、マルチステークホルダー・パートナーシップを始めとする再犯防止施策の充実について詳細な記載が設けられるなど、同分野に対する高い関心が示された。
そこで、法務省においては、外務省と連携し、京都コングレスの成果の一つとして、「再犯防止に関する国連準則」の策定を主導していくこととした。
国連準則は、各国における立法や施策立案の際に参照されることを通じ、各国の施策を充実させるために重要な役割を果たすものである。我が国は、再犯防止推進計画を策定し、国、地方公共団体、民間の団体等が相互に連携協力して取組を進め、着実にその効果を上げてきているところ、このような官民連携による社会復帰支援など、日本の強みを準則に最大限反映させるべく、同準則策定に向けてリーダーシップを発揮している。