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令和6年版 犯罪白書 第2編/第5章/第4節

第4節 応急の救護・更生緊急保護の措置等

保護観察所では、保護観察対象者が、適切な医療、食事、住居その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を得ることができないため、その改善更生が妨げられるおそれがある場合は、医療機関、福祉機関等から必要な援助を得るように助言・調整を行っているが、その援助が直ちに得られないなどの場合、保護観察対象者に対して、食事、衣料、旅費等を給与若しくは貸与し、又は宿泊場所等の供与を更生保護施設に委託するなどの緊急の措置(応急の救護)を講じている。

また、満期釈放者、保護観察に付されない全部又は一部執行猶予者、検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者、罰金又は科料の言渡しを受けた者、労役場出場者、少年院退院者・仮退院期間満了者等に対しても、その者の申出に基づいて、応急の救護と同様の措置である更生緊急保護の措置を講じている。

刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による改正後の更生保護法の一部が、令和5年12月から施行され、更生緊急保護の措置を含めて、切れ目のない「息の長い」社会復帰支援を行うための諸制度の拡充が図られた。具体的には、更生緊急保護の対象については、処分保留で釈放された者のうち検察官が罪を犯したと認めたものが加わり(同法85条1項6号)、更生緊急保護の申出の時期については、刑事施設又は少年院に収容中の段階から更生緊急保護を申し出ることが可能となった(同法86条1項)。また、更生緊急保護の期間については、刑事上の手続等による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内(特に必要があると認められるときは、更に6月を超えない範囲内(最長1年))において措置をとることが可能とされていたところ、新たに、金品の給与又は貸与及び宿泊場所の供与以外の措置については、特に必要があると認められるときは、1年6月を超えない範囲内(最長2年)において措置をとることが可能となった(同法85条4項)。さらに、更生緊急保護の措置を補完する制度として、「刑執行終了者等に対する援助」が新設され、満期釈放者等の改善更生を図るため必要があると認めるときは、保護観察所において、その者の意思に反しないことを確認した上で、情報提供や助言等の援助を行うことが可能となった(同法88条の2)。

更生緊急保護及び刑執行終了者等に対する援助の期間
【資料提供:法務省保護局】
更生緊急保護及び刑執行終了者等に対する援助の期間【資料提供:法務省保護局】

2-5-4-1表は、令和5年における応急の救護等(補導援護としての措置を含む。以下この章において同じ。)及び更生緊急保護の措置の実施状況を見たものである。

2-5-4-1表 応急の救護等・更生緊急保護の措置の実施状況
2-5-4-1表 応急の救護等・更生緊急保護の措置の実施状況
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起訴猶予者、保護観察に付されない全部執行猶予者、罰金又は科料の言渡しを受けた者については、検察庁等と保護観察所が連携し、検察庁からの協議に基づき、保護観察所が、更生保護施設又は自立準備ホームへの入所等の必要事項に係る調査及び調整を行うなど、必要性や相当性が認められる者を対象として、一定の期間重点的な生活指導等を行い、福祉サービス等に係る調整や就労支援等の社会復帰支援を内容とする「起訴猶予者等に係る更生緊急保護の重点実施等」を行ってきた。同重点実施等については、令和5年12月からは、前記改正後の更生保護法において新設された「勾留中の被疑者に対する生活環境の調整」(同法83条の2)等の措置として、勾留されている被疑者又は被告人に対する同様の調整が実施されているところ、同法施行前の同年4月から11月までに、保護観察所が検察庁から事前協議を受け、同重点実施等を行った人員は、345人であり、同年12月に勾留中の被疑者又は被告人に対する調整を開始した人員は58人であった(法務省保護局の資料による。)。

地域生活定着支援センター(本章第2節2項参照)により、高齢又は障害のある被疑者・被告人の福祉サービス等の利用調整や釈放後の継続的な援助等を行う「被疑者等支援業務」が実施されていることを踏まえ、保護観察所は、勾留中の被疑者等に対する調整の対象者のうち、高齢又は障害により福祉サービス等を必要とする者については、本人が支援を希望する場合に、地域生活定着支援センターと連携した支援を行っている。

また、満期釈放者については、保護観察所において、再犯防止対策の充実強化に向けて、更生保護施設等の一時的な居場所の確保、更生保護施設を退所した者に対する相談支援の充実(本章第6節2項参照)等の取組を進めている。さらに、帰住先の確保や地域への定住等に困難が見込まれる矯正施設被収容者については、地方更生保護委員会による指導・助言を受けながら、保護観察所において、生活環境の調整を行い、出所後、保護観察又は満期釈放となった場合の更生緊急保護を行っている。

あわせて、保護観察所では、地域社会における犯罪をした者等の改善更生及び犯罪の予防に寄与するため、過去に保護観察を受けていた者や更生緊急保護の期間が満了した者等を含む地域住民又は関係機関・団体からの相談に応じ、更生保護に関する専門的知識に基づく情報提供や助言等の援助(更生保護に関する地域援助)を行うこととされた(同法88条の3。詳細については、コラム4参照)。