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令和6年版 犯罪白書 第2編/第5章/第4節/コラム4

コラム4 保護観察所における「更生保護に関する地域援助」

保護観察所においては、かねてから、保護観察を受けていた者の家族や協力雇用主等の関係者、地方公共団体を始めとする関係機関等から相談があった場合にはこれに応じ、可能な範囲で必要な助言等を行っていたところであるが、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による改正後の更生保護法(平成19年法律第88号)により、これが「更生保護に関する地域援助」として法定化され、令和5年12月から施行された。更生保護に関する地域援助は、保護観察所が、地域社会における犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生並びに犯罪の予防に寄与するため、地域住民や関係機関等からの相談に応じ、更生保護に関する専門的知識を活用し、情報の提供・助言その他の必要な援助を行うものであり、犯罪をした者及び非行のある少年に対する「息の長い」社会復帰支援の推進や「地域とともに歩み、地域に貢献する更生保護」の実現のための基盤となる業務である。

以下、保護観察所が実施する地域援助の概要を紹介する。

1 相談の受付

保護観察所に相談が寄せられる場合は様々であり、<1>過去に犯罪をした者若しくは非行のあった者又は地域において犯罪や非行に結び付くおそれのある問題を抱える者から相談がなされる場合のほか、<2><ア>過去に担当していた元保護観察対象者等から生活上の相談を受けた保護司、<イ> 更生保護施設退所者等から生活上の相談を受けた更生保護施設、<ウ>保護観察を終了した者を保護観察中から継続して雇用している協力雇用主、<エ>支援対象者への支援を現に行っている関係機関・団体から相談がなされる場合、<3>犯罪や非行に結び付くおそれのある問題を抱える者への対応等について、その家族や地域住民等から相談がなされる場合等がある。

2 支援対象者等に対する援助

保護観察所は、過去に犯罪をした者等からの相談を受け付けたときは、地域社会において改善更生及び社会復帰を図る上で、医療、保健、福祉、就労等に係る各種支援を必要としているもの(以下「支援対象者」という。)を対象として、その者が関係機関等から必要な保護又は援助を受けることができるよう、更生保護に関する専門的知識を活用し、地域で受けることのできる支援の紹介・調整、相談内容に応じた助言等の必要な援助を行う。支援対象者に対する援助を行うに当たっては、保護観察所は、更生保護に関する地域援助を受けることがその者の意思に反しないことを確認した上で、その改善更生を図るために必要かつ相当な限度において行う。

また、支援対象者への対応等について、その家族や地域住民等から相談があった場合には、保護観察所は、適当な支援機関等による支援に関する情報提供、助言等の援助を行っている。

3 支援機関等に対する援助

保護観察所は、地方公共団体を始め、地域において犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生並びに犯罪の予防に資する支援等を行う関係機関・団体を対象として、更生保護に関する専門的知識を活用し、<1>関係機関・団体が支援している支援対象者への対応に関する助言等、<2>更生保護又は犯罪予防に関する研修等への協力、<3>広報等に係る必要な情報の提供等の援助を実施している。

4 地域支援ネットワークの構築

保護観察所は、更生保護に関する地域援助を実施するに当たり、地域の実情に応じ、地域支援ネットワーク(支援対象者が地域において必要な支援を円滑かつ継続的に受けるために必要な都道府県単位又は市区町村等の地域単位における連携体制)を整備する。そのため、保護観察所は、犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生及び社会復帰に資する支援を行っている地域の関係機関・団体について把握し、それらの関係機関・団体に対して地域援助を含む更生保護の取組に関する説明を行うなど積極的な周知・広報に努めている。

各保護観察所には、犯罪・非行の地域相談窓口「りすたぽ」が設けられている。「りすたぽ」は、“一人ひとりの再出発(リスタート)をサポートする”という思いが込められた名称である。保護観察所が、生きづらさを抱えながら地域での立ち直りを目指す元保護観察対象者等の犯罪をした人、その家族等の関係者、地域での支援に当たる関係機関・団体等の身近な相談窓口となって、専門機関としての役割を一層果たすことが期待されている。

更生保護に関する地域援助のリーフレット【法務省保護局提供】
更生保護に関する地域援助のリーフレット【法務省保護局提供】