今回の調査では、少年の家庭の経済状況の違いによる比較を行うため、<1>所得の多寡、<2>家計の状況、<3>経済的な理由による子供の体験の欠如の有無について調査し、「低所得」、「家計のひっ迫」及び「子供の体験の欠如」の三つの要素のうち、二つ以上に該当する世帯を「生活困窮層」、一つに該当する世帯を「周辺層」、いずれにも該当しない世帯を「非生活困難層」と分類した。
保護者を調査対象者として、世帯収入(少年と生計を共にしている世帯全員のおおよその税込の年間収入)を調査した。その結果は、7-5-4-1図のとおりである。総数では、「400万円未満」が44.7%、「400万円以上900万円未満」が43.9%、「900万円以上」が11.5%であった。
調査内容が異なるため結果を単純に比較することはできないものの、厚生労働省の調査によれば、令和2年の1世帯当たりの所得は、400万円未満が45.4%、400万円以上900万円未満が38.0%、900万円以上が16.6%であり(厚生労働省「令和3年国民生活基礎調査の概況」(令和4年9月)(以下この節において「国民生活基礎調査」という。)による。)、今回の調査の対象者は、「900万円以上」の構成比が低い傾向が見られた。また、少年院在院者の世帯と保護観察処分少年の世帯を比較すると、少年院在院者の世帯に係る「900万円以上」の構成比(9.4%)は、保護観察処分少年の世帯に係る「900万円以上」の構成比(14.4%)より低かった。
今回の調査では、世帯収入を世帯人数の平方根で除した値が、国民生活基礎調査の所得金額の中央値を平均世帯人員の平方根で除した値の2分の1(143万円)未満であった場合を「低所得」に該当するものとした。
保護者を調査対象者として、過去1年間に、家族が必要とする食料・衣服が買えなかった経験の頻度及び公共料金等を滞納した経験を調査した。その結果は、7-5-4-2図のとおりである。総数を見ると、買えなかった経験の「よくあった」、「ときどきあった」及び「まれにあった」の該当率は、食料が22.1%、衣服が24.4%であった。各公共料金を滞納した経験の「あった」の構成比は、総数で5.1~5.3%であった。
調査対象者の年齢層が同一ではないことには留意が必要であるが、内閣府の調査によれば、食料・衣服が買えなかった経験の「よくあった」、「ときどきあった」及び「まれにあった」の該当率を「不明・無回答」を除いて算出すると、食料が11.4%、衣服が16.4%であり、今回の調査の対象者は、買えなかった経験を有する者の比率が高い傾向が見られた。各公共料金を滞納した経験についても、内閣府の調査では、「あった」の該当率は、3.5~3.8%であり、今回の調査の対象者は、「あった」の該当率が高い傾向が見られた(内閣府政策統括官「子供の生活状況調査の分析報告書」(令和3年12月)による。)。また、少年院在院者の世帯と保護観察処分少年の世帯を比較すると、食料や衣服が買えなかった経験を有する者の比率は、少年院在院者の世帯の方が低かった。
今回の調査では、食料・衣服が買えなかった経験又は公共料金等を滞納した経験(7-5-4-2図CD-ROM参照)がある場合に「家計のひっ迫」に該当するものとした。
保護者を調査対象者として、家庭で子供にしていることについて調査した。その結果は、7-5-4-3図のとおりである。総数を見ると、「経済的にできない」の構成比は、「1年に1回くらい家族旅行に行く」(17.0%)が最も高く、次いで「学習塾に通わせる(または家庭教師に来てもらう)」(11.5%)、「習い事(音楽、スポーツ、習字等)に通わせる」(9.3%)であった。少年院在院者の家庭と保護観察処分少年の家庭を比較すると、一貫した傾向は見られなかった。
今回の調査では、いずれかの項目につき「経済的にできない」に該当した場合に「子供の体験の欠如」に該当するものとした。
「低所得」、「家計のひっ迫」及び「子供の体験の欠如」の三つの要素につき、前記の基準で分類すると、少年院在院者の世帯では、生活困窮層が69人(27.5%)、周辺層が42人(16.7%)、非生活困難層が140人(55.8%)であり、保護観察処分少年の世帯では、生活困窮層が34人(20.9%)、周辺層が34人(20.9%)、非生活困難層が95人(58.3%)であった。