公訴権は、原則として検察官に付与されているが、検察官の不起訴処分に対する不服申立制度として、検察審査会に対する審査申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求(「準起訴手続」ともいう。)の制度がある。
検察審査会(現在、全国に165か所が設置されている。)は、選挙人名簿に基づきくじで選定された11人の検察審査員(任期6か月)により組織され、申立てにより又は職権で、検察官の不起訴処分の審査を行い、「起訴相当」、「不起訴不当」又は「不起訴相当」の議決を行う。
検察審査会法(昭和23年法律第147号)の改正(平成16年法律第62号。平成21年5月施行)により、検察審査会が「起訴相当」の議決を行った事件につき、検察官が再度不起訴処分にした場合又は一定期間内に公訴を提起しなかった場合には、検察審査会は、再審査を行わなければならず、その結果、「起訴をすべき旨の議決」(起訴議決)を行ったときは、公訴が提起されることとなる。この場合、公訴の提起及びその維持に当たる弁護士(指定弁護士)が裁判所により指定され、この指定弁護士が、起訴議決に係る事件について、検察官の職務を行う。
検察審査会における事件(再審査に係るものを含まない。)の受理・処理人員の推移(最近5年間)は、6-2-1-1表のとおりである。令和4年における受理人員のうち、刑法犯(平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項に規定する自動車運転過失致死傷を含む。)は3,554人であり、罪名別に見ると、業務上横領が1,349人と最も多く、次いで、職権濫用(551人)、文書偽造(345人)、傷害(284人)の順であった。特別法犯(自動車運転死傷処罰法違反を含む。)は486人であり、同法違反が134人と最も多かった(いずれも延べ人員。最高裁判所事務総局の資料による。)。
検察審査会において起訴相当又は不起訴不当の議決がされた事件について、検察官が執った事後措置の推移(最近5年間)を、原不起訴処分の理由別に見ると、6-2-1-2表のとおりである。
検察審査会法施行後の昭和24年から令和4年までの間、検察審査会では、合計で延べ18万7,063人の処理がされ、延べ1万9,256人(10.3%)について起訴相当又は不起訴不当の議決がされており、このうち、検察官により起訴された人員は、延べ1,831人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。
検察審査会の起訴相当の議決がされた後、検察官が不起訴維持の措置を執り、検察審査会が再審査した事件のうち、平成21年から令和4年までに再審査が開始されたのは、延べ60人であり、起訴議決に至ったものは延べ15人、起訴議決に至らなかった旨の議決は延べ18人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。
昭和24年から令和4年までの間、検察審査会の議決後起訴された人員(指定弁護士による公訴提起を含む。)の第一審裁判では、1,527人が有罪(自由刑544人、罰金刑983人)、106人が無罪(免訴及び公訴棄却を含む。)を言い渡された(最高裁判所事務総局の資料による。)。このうち、平成21年から令和4年までの間、検察審査会の起訴議決があり、指定弁護士による公訴提起がなされて裁判が確定した事件の人員は、11人(有罪2人(自由刑1人、財産刑1人)、無罪(免訴及び公訴棄却を含む。)9人)であった(法務省刑事局の資料による。)。
付審判請求は、公務員による各種の職権濫用等の罪について告訴又は告発をした者が、不起訴処分に不服があるときに、事件を裁判所の審判に付するよう管轄地方裁判所に請求することを認める制度である。地方裁判所は、その請求に理由があるときは、事件を裁判所の審判に付する旨の決定を行い、この決定により、その事件について公訴の提起があったものとみなされ、公訴の維持に当たる弁護士(指定弁護士)が裁判所により指定され、この指定弁護士が、その事件について検察官の職務を行う。
令和4年における付審判請求の新規受理人員は1,075人、処理人員は915人であり、付審判決定があった者はいなかった(司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。)。
また、刑事訴訟法施行後の昭和24年から令和4年までの間に付審判決定があり、公訴の提起があったとみなされた事件の裁判が確定した件数は22件であり、うち13件が無罪(免訴を含む。)であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。