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令和5年版 犯罪白書 第5編/第1章/コラム09

コラム9 特別法犯の再犯者率

本編第2章では、起訴人員中の有前科者の人員及び有前科者率に言及しているところ、令和4年における刑法犯及び特別法犯(道交違反を除く。)の起訴人員中の有前科者率は、それぞれ45.7%、38.2%であり(5-2-1表参照)、特別法犯の起訴人員中の有前科者率の方が刑法犯のそれよりも若干低く、最近5年間を見ても、同様の傾向が続いている。本章では、刑法犯により検挙された者のうち、再犯者の人員及び再犯者率(令和4年は47.9%)に言及しているところ(5-1-1図参照)、特別法犯の再犯者率には言及していないことから、本コラムでは特別法犯の再犯者率について概観しつつ、その意味するところを考察する。

刑法犯及び特別法犯(交通法令違反を除く。)により検挙された者のうち、再犯者の各人員及び各再犯者率の推移(最近5年間)は図5のとおりである。特別法犯(交通法令違反を除く。)により検挙された者の再犯者率は、おおむね横ばいであり、いずれの年においても、刑法犯により検挙された者の再犯者率よりも若干低く、有前科者率と同様の傾向を示している。

図5

これらを見ると、全体として特別法犯により検挙あるいは起訴された者は、刑法犯により検挙あるいは起訴された者よりも検挙歴や前科がない者が多いといえる。もっとも、道交違反を除く特別法犯の中で、令和4年の検察庁新規受理人員が罪名別で最も多い覚醒剤取締法違反について、同法違反で検挙された20歳以上の者の同一罪名による再犯者率を見ると69.2%(5-1-4図<1>参照)と非常に高い数値となっているほか、同年に同法違反で起訴された者の有前科者率も77.2%(5-2-1表参照)と同様に非常に高い数値となっているとおり、同法違反については、検挙歴や前科を有している者による犯行が特に多い。これに対し、道交違反を除く特別法犯(条例違反を除く。)のうち、覚醒剤取締法違反に次いで検察庁新規受理人員が多い大麻取締法違反、軽犯罪法違反で起訴された者の有前科者率は、それぞれ33.0%、33.2%と特別法犯全体のそれ(38.2%)を下回っている(CD-ROM資料1-45-2-1表参照)。同年における覚醒剤取締法違反の検察庁新規受理人員は、道交違反を除く特別法犯全体の12.3%を占めている(1-2-1-2図参照)ことからすると、その高い再犯者率が、特別法犯全体の再犯者率を押し上げている可能性が考えられる。これらの点は、覚醒剤取締法違反にかかる再犯防止対策の重要性を裏付けるものといえよう。このように、再犯者率等の各指標を評価するに当たっては、全体の推移に着目しつつ、個別の特徴を見ていくことも重要である。