各少年院には、法務大臣が任命する7人以内の外部の委員で構成される少年院視察委員会が設置されており、同委員会は、少年院を視察するなどして、その運営に関し、少年院の長に対して意見を述べるものとされている。令和4年度における少年院視察委員会の活動状況は、会議の開催196回、少年院の視察61回、在院者との面接381件であり、同委員会が少年院の長に対して提出した意見は270件であった(法務省矯正局の資料による。)。
在院者には、できる限り戸外で、健全な心身の成長を図るため適切な運動を行う機会が与えられている。運動においては、矯正教育における体育指導とは異なり、在院者の自主性が尊重されている。また、少年院の職員である医師等又は少年院の長が委嘱する医師等が、在院者の診療を行い、必要な医療上の措置を執っている(第2編第4章第4節2項参照)。
なお、令和5年4月1日現在、専門的に医療を行う少年院(第3種)として、東日本少年矯正医療・教育センター及び京都医療少年院の2庁が設置されている。
在院者の処遇の適切な実施を確保し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るのにふさわしい安全かつ平穏な共同生活を保持するためには、少年院の規律及び秩序は適正に維持されなければならない。そのため、少年院においては、少年院法により定められた要件や手続等に基づき、少年院の規律及び秩序を害する反則行為をした在院者に対して、不利益処分である懲戒を行うことがある。懲戒は、少年院の規律及び秩序の維持を主たる目的としつつ、当該在院者の規範意識を喚起する教育的機能を持つものであり、<1>厳重な訓戒(少年院の長が、反則行為をした在院者にその非を教え、今後を戒めるもの)、<2>20日以内の謹慎(反則行為をした在院者を集団処遇から離脱させ、居室内で処遇することで反省を促すもの)の2種類がある。令和4年における出院者(1,363人)のうち、在院中に、厳重な訓戒の処分を受けた者は151人、20日以内の謹慎の処分を受けた者は302人であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
なお、令和5年6月に施行された刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)により、逃走罪の主体が「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」から「法令により拘禁された者」に改められ、これまで逃走罪の主体とされていなかった少年院の保護処分在院者等を含め、少年院を含む矯正施設に収容されている者は全て逃走罪の主体となった(第2編第1章1項(4)参照)。
不服申立制度として、救済の申出及び苦情の申出の制度がある。救済の申出は、自己に対する少年院の長の措置その他自己が受けた処遇について苦情があるときに、法務大臣に対して、救済を求める申出をすることができる制度であり、苦情の申出は、自己に対する少年院の長の措置その他自己が受けた処遇について、監査官及び少年院の長に対して申出をすることができる制度である。令和4年における救済の申出件数は、43件であった(法務省矯正局の資料による。)。