令和3年5月、少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)が成立した。これにより、年齢満18歳以上20歳未満の特定少年に係る保護事件について、ぐ犯をその対象から除外し、原則として検察官に送致しなければならない事件についての特則等の規定を整備するとともに、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がされた後は、少年に適用される刑事事件の特例に関する規定は、特定少年には原則として適用しないことなどを内容とする少年法等の一部改正が行われた(4年4月施行。詳細につき、第3編第2章第1節1項参照)。
令和4年6月、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)が成立した。これにより、<1>侮辱罪の法定刑について、「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げること、<2>懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるものとすること、<3>再度の刑の全部の執行猶予の言渡しをすることができる対象者の範囲を拡大するなど刑の執行猶予制度を拡充することなどを内容とする刑法及び刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)等の一部改正並びに<4>施設内・社会内処遇に関する規定の整備を内容とする刑事収容施設法、更生保護法(平成19年法律第88号)、更生保護事業法(平成7年法律第86号)、少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)の一部改正が行われた(<1>は令和4年7月7日施行、<2>から<4>は5年12月1日又は7年6月までに段階的に施行)。
法務大臣は、令和4年1月、法制審議会に対し、マネー・ローンダリング罪の法定刑について諮問を行い(諮問第119号)、同審議会において、調査審議が行われ、同年2月、法務大臣に対する答申がなされた。この答申においては、組織的犯罪処罰法に規定されている不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為の罪、犯罪収益等隠匿の罪及び犯罪収益等収受の罪の法定刑をそれぞれ引き上げることが掲げられた。
また、法務大臣は、令和4年6月、法制審議会に対し、犯罪収益等の没収について諮問を行い(諮問第123号)、同審議会において、調査審議が行われ、同年9月、法務大臣に対する答申がなされた。この答申においては、同法に規定されている没収することができる財産は、不動産若しくは動産又は金銭債権でないときも、これを没収することができるものとすることが掲げられた。
前記諮問第119号及び前記諮問第123号に対する答申については、令和4年10月、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、同年12月2日、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第97号。本編第6章第1節4項参照)が成立した。これにより、犯罪収益等隠匿の罪等の法定刑の引上げ及び犯罪収益等として没収することができる財産の拡大を内容とする組織的犯罪処罰法の一部改正並びに薬物犯罪収益等隠匿の罪等の法定刑の引上げを内容とする麻薬特例法の一部改正が行われた(同年12月29日施行)。
法務大臣は、令和2年2月、法制審議会に対し、保釈中の被告人や刑が確定した者の逃亡を防止し、公判期日への出頭や刑の執行を確保するための刑事法の整備について諮問を行い(諮問第110号)、同審議会において調査審議が行われ、3年10月、法務大臣に対する答申がなされた。この答申においては、保釈等をされた被告人が公判期日に出頭しない場合や制限住居から離脱した場合の罰則の新設及び被告人の国外逃亡を防止するためにGPS端末を被告人の身体に装着することを命じる制度の新設などが掲げられた。
また、法務大臣は、令和3年5月、法制審議会に対し、刑事手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための法整備について諮問を行い(諮問第115号)、同審議会において調査審議が行われ、同年9月、法務大臣に対する答申がなされた。この答申においては、性犯罪の被害者等について、捜査・公判・判決後の各段階における個人特定事項の秘匿措置を整備することなどが掲げられた。
前記諮問第110号及び前記諮問第115号に対する答申については、令和5年3月、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、同年5月10日、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)が成立した。これにより、公判期日への出頭及び刑の執行の確保に関しては、<1>公判期日への不出頭罪等の新設、<2>逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等、<3>保釈等をされた被告人に対する監督者制度の創設、<4>位置測定端末により保釈された被告人の位置情報を取得する制度の創設等が行われ、犯罪被害者等の情報の保護に関しては、<5>性犯罪の被害者等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達する措置等により、刑事手続において当該個人特定事項を秘匿するための規定の整備が行われた(10年5月までに段階的に施行)。
法務大臣は、令和3年9月、法制審議会に対し、性犯罪に対処するための法整備について諮問を行い(諮問第117号)、同審議会において調査審議が行われ、5年2月、法務大臣に対する答申がなされた。この答申においては、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪の要件の改正、いわゆる性交同意年齢の引上げ、わいせつ目的で16歳未満の者に面会を要求する行為等に係る罪の新設、公訴時効の見直し、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設、性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為等に係る罪の新設、性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みの導入等が掲げられた。
前記諮問第117号に対する答申については、令和5年3月、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案が国会に提出され、同年6月16日、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和5年法律第67号)が成立した。前記令和5年法律第66号により、<1>強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合し、それらの構成要件を改めて不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とするとともに、13歳以上16歳未満の者に対して当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者がわいせつな行為又は性交等をした場合に不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪により処罰することを可能とするなどの罰則の改正、<2>16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設、<3>性犯罪についての公訴時効期間の延長、<4>被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設等の規定の整備が行われ、前記令和5年法律第67号により、<5>性的な姿態を撮影する行為や、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰する規定、<6>性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とする規定、<7>押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置に関する規定の整備が行われた(<3>は同年6月23日施行、<1>、<2>、<5>及び<6>は同年7月13日施行、<4>は同年12月までに、<7>は6年6月までにそれぞれ施行)。
法務大臣は、令和4年6月、法制審議会に対し、情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備について諮問を行い(諮問第122号)、同審議会は、刑事法(情報通信技術関係)部会において、調査審議を行っている。