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令和5年版 犯罪白書 第2編/第6章/第1節/1

1 京都コングレスの成果の具体化

我が国は、京都コングレスで採択された「京都宣言」の実施にリーダーシップを発揮すべく、「国際協力の促進のための各地域における実務家ネットワークの創設」、「刑事司法分野における次世代を担う若者の育成」及び「世界各国における再犯防止の推進」の三つを柱とした取組を積極的に進め、法の支配に裏打ちされた新たな国際秩序形成を主導している。

(1)アジア太平洋刑事司法フォーラム
ア 意義

「京都宣言」では、国際協力及び法執行機関等を対象とした地域ネットワーク構築等の重要性が確認された。もっとも、我が国が属するアジア太平洋地域においては、捜査共助の制度・運用に対する各国相互の理解不足等により、同分野における国際協力にはなお改善の余地があるほか、我が国が積極的に進めている東南アジア諸国における刑事司法分野の技術支援についても、効率的な国際協力を推進するため、他の支援国との情報共有や意見交換をすることが有効である。

そこで、法務省は、アジア太平洋地域における刑事司法実務家による情報共有課題解決型プラットフォームとして国連薬物・犯罪事務所(UNODC)との共催で「アジア太平洋刑事司法フォーラム(英語名:Criminal Justice Forum for Asia and the Pacific 略称:Crim-AP)」を定期開催することとし、各国の刑事司法実務家による相互理解・信頼を促進し、知見を共有することなどにより、アジア太平洋地域における一層の国際協力を進めている。

イ これまでの実績

令和4年(2022年)2月14日及び同月15日に第1回を、令和5年(2023年)2月13日及び同月14日に第2回をいずれも東京において開催した。

第2回は、23の国・機関から閣僚・次官級を含む代表団の参加があり(来場参加とオンライン参加のハイブリッド方式)、開会式では、我が国の法務大臣による開会挨拶の後、UNODCの事務局長からメッセージがあった。

また、全体会合では、「京都宣言の実施に向けて:犯罪と戦うためのアジア太平洋における国際協力の強化」という全体テーマに関し、各国・機関の代表団長がステートメントを行い、我が国からは法務事務次官がステートメントを行った。

その後、捜査共助と矯正保護分野の国際協力に関する二つの分科会に分かれ、「捜査共助要請の種類(電子証拠及び証人の供述)」、「非拘禁措置及び犯罪者処遇に係る課題並びに進展」のテーマの下、各国・機関の実務家が情報共有や意見交換を行った。

(2)法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム
ア 意義

令和3年(2021年)2月に実施された京都コングレス・ユースフォーラムでは、安全・安心な社会の実現に向けた40項目の勧告が採択され、京都コングレスに提出された。同勧告は、京都コングレスの議論に若者ならではの新鮮な視点を提供するものであり、各国から高い評価の声が寄せられた。また、「京都宣言」では、ユースフォーラムの開催などを通じた若者のエンパワーメントの重要性が指摘された。

そこで、法務省では、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)の協力の下、「法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム」を定期開催することとした。「法遵守の文化」とは、国民が、一般に、法及びその執行が公正・公平であると信頼し、それゆえこれらを尊重する文化をいい、「法の支配」を支えるものである。法務省は、同ユースフォーラムが、若者が法の支配や司法をめぐる現代の課題に関する理解を深め、互いのバックグラウンドや価値観を理解・共有し、多様性を許容してネットワークや友情を育む場となるよう、また、若者の声を国連に届けることができる場となるよう努めている。

イ これまでの実績

令和3年(2021年)10月9日及び同月10日に東京において第1回を、令和4年(2022年)12月3日及び同月4日に京都において第2回を開催した。

第2回は、来場参加とオンライン参加を合わせて約50の国・地域から約100名の若者が参加し、開会式では、我が国の法務大臣による開会挨拶(法務大臣政務官代読)の後、承子女王殿下の御臨席を賜り、若者の未来を創造する力に対する期待のお言葉をいただいた。また、オープニングアクト兼基調講演では、ダンサー・女優の甲田真理氏に、「A Life of Dance~From Hollywood to Correctional Facilities~」のテーマで講演をしていただいた。

その後、「多様性と包摂性のある社会に向けた若者の役割」という全体テーマの下、「インターネット上の誹謗中傷のない社会を目指して」及び「組織的な犯罪への若者の関与と組織からの離脱・更生、組織的な犯罪への対処のための若者の役割」を議題とする分科会に分かれ、熱心に議論が行われた。

この議論の結果は「勧告」として採択され、令和4年(2022年)12月に行われた犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)において提出されるとともに、ユースフォーラムの議長が若者代表としてスピーチを行った。

(3)再犯防止国連準則策定の主導

「京都宣言」では、マルチステークホルダー・パートナーシップをはじめとする再犯防止施策の充実について詳細な記載が設けられるなど、同分野に対する高い関心が示された。

そこで、法務省においては、外務省と連携し、京都コングレスの成果の一つとして、再犯防止に関する国連準則の策定を主導していくこととした。

国連準則は、各国における立法や施策立案の際に参照されることを通じ、各国の施策を充実させるために重要な役割を果たすものである。我が国は、再犯防止推進計画を策定し、国、地方公共団体、民間の団体等が相互に連携協力して取組を進め、着実にその効果を上げてきているところ、このような官民連携による社会復帰支援など、日本の強みを準則に最大限反映させるべく、再犯防止に関する準則策定に向けてリーダーシップを発揮している。