法務省は、司法外交閣僚フォーラムとして、令和5年(2023年)7月6日及び同月7日の2日間にわたり、東京にて、「日ASEAN特別法務大臣会合」、「G7司法大臣会合」及び「ASEAN・G7法務大臣特別対話」の3つの閣僚級会合を主催した。また、関連イベントとして、日本とASEAN各国等の若者を対象とした「法の支配推進のための日ASEAN特別ユースフォーラム」や、法務省の各局部課や外部機関による特別イベント・展示も実施された。
法務省では、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を国際社会に発信し、浸透させていくための取組である司法外交に取り組んできた。ロシアによるウクライナ侵略等、国際社会が力による一方的現状変更の試みに直面する中、国際社会の平和と安全の礎となるこうした価値を掲げる司法外交の重要性は一層高まっている。こうした中、令和5年(2023年)は、日ASEAN友好協力50周年という重要な節目に当たり、また、G7との関係では我が国が議長国という地位にあることから、法務省では、ASEAN、G7双方との連携を強化して司法外交を展開するべく、司法外交閣僚フォーラムを開催するに至った。
日ASEAN特別法務大臣会合は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の要となる重要なパートナーであるASEAN各国との法務・司法分野における初めての閣僚級会合である。法務省では、長年にわたってASEAN各国に対して法制度整備支援等を行い、法の支配の推進に貢献するとともに強固な信頼関係を構築してきたところ、本会合では、「法の支配を推進するための日ASEANの連携強化:友好協力関係50周年後の新たなフェーズへ」との全体テーマの下、法務・司法分野における日ASEANの協力を一層深化させるべく、今後の協力の在り方等について議論し、成果文書として閣僚による共同声明を採択した。共同声明では、法の支配等の価値の維持・促進に共にコミットすることや、我が国とASEANがイコールパートナーシップの精神に基づき協力関係を深めていくことなどが確認された。
G7司法大臣会合は、ロシアによるウクライナ侵略を受けて、G7として法の支配等の重要性を確認して国際社会に発信し、また、ウクライナ情勢に関する対応等について協議するため、令和4年(2022年)11月にドイツ(当時の議長国)において13年ぶりに開催された。そして、同会合において、G7から次期議長国である我が国のリーダーシップへの期待が表明されたことなどを受けて令和5年(2023年)の開催に至った。法務省では、この機運を引き継ぎ、また、同年5月に開催されたG7広島サミットにおいて、ウクライナの復旧・復興に向けた支援や同国の汚職との闘いに関する取組の必要性や、法の支配等を堅持するためにASEANを含むパートナーとの連携を強化していくことなどが確認されたことを受けて、「司法インフラ整備を通じたウクライナ復興支援」、「法の支配の推進に向けたG7の法務・司法分野での協力体制構築」、「インド太平洋における「法の支配」推進に向けたG7とASEAN等との法務・司法分野での連携」との各テーマを設定して議論を牽引し、成果文書として「東京宣言」を採択した。東京宣言では、法の支配に基づくG7の強固な連帯を確認するとともに、ウクライナの汚職との戦いをG7として支援するため「ウクライナ汚職対策タスクフォース」を設置し、関係国・機関と連携して、汚職対策を通じたウクライナの復興を支援する取組を行うことが確認された。また、ASEANとの対話を継続することも確認された。
国際社会が力による一方的な現状変更の試みに直面し続けている中、G7からは、アジア唯一のG7メンバーであり、ASEANと独自の信頼関係を構築してきた我が国に対して、ASEAN各国を始めとするインド太平洋地域との法務・司法分野における連携強化にリーダーシップを発揮することへの強い関心が示され、また、ASEANからもG7との法務・司法分野での連携強化に向けた強い関心が示された。そこで、ASEANとG7の法務大臣等が一堂に会する機会を捉え、法務省は、「ASEAN・G7法務大臣特別対話」を主催し、「インド太平洋における「法の支配」推進に向けたG7とASEAN等との法務・司法分野での連携」というテーマの下、ASEANとG7双方の法務大臣等が法の支配の推進などについて意見交換し、連携を強化することができる場を設けた。法務・司法分野のASEANとG7の閣僚級が一堂に会する会合は史上初であり、本会合では、ASEANとG7による更なる対話の道を開くことで一致するとともに、我が国の提案により、ASEANとG7の法務・司法分野の次世代を担う人材を対象とした「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」を創設することにつき各国から賛同が得られた。
法務省は、司法外交閣僚フォーラムの開催に合わせて、タイ法務研究所(TIJ)との共催で、令和5年(2023年)7月5日及び同月6日の2日間にわたり、東京において、日本とASEAN各国等の若者が法の支配について議論する「法の支配推進のための日ASEAN特別ユースフォーラム」を開催した。日本、ASEAN加盟国及び東ティモールから60名以上の若者が会場に集まり、「司法へのアクセスを強化するためのリテラシーの構築-デジタル時代における法の支配への鍵-」をテーマとして、活発で実りある議論が行われた。議論の成果は「勧告」として取りまとめられ、日ASEAN特別法務大臣会合に提出された。また、同勧告は、同年9月に行われた国連犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)においても提出されるとともに、同委員会ではユースフォーラムの共同議長による若者代表としてのスピーチが行われた。
司法外交閣僚フォーラム開催を記念し、本フォーラムと合わせて、法務省の各局部課や関係機関による特別イベントが来場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催された。ASEAN地域における司法アクセスや法教育、ビジネスと人権、法遵守の文化、国際仲裁・国際調停、社会内処遇の技術支援、アジア矯正建築会議、出入国管理等の特別イベントに、2日間で来場者延べ413人、オンライン延べ935人が参加した。また、法務省の各局部課や関係機関の施策等を紹介する展示ブースも設置された。