更生保護施設は、主に保護観察所から委託を受けて、住居がなかったり、頼るべき人がいないなどの理由で直ちに自立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を宿泊させ、食事を給与するほか、就職援助、生活指導等を行ってその円滑な社会復帰を支援している施設である。
令和5年4月1日現在、全国に102施設があり、更生保護法人により99施設が運営されているほか、社会福祉法人、特定非営利活動法人及び一般社団法人により、それぞれ1施設が運営されている。その内訳は、男性の施設87、女性の施設7及び男女施設8である。収容定員の総計は、2,399人であり、男性が2,202人(うち少年318人)、女性が197人(うち少年47人)である(法務省保護局の資料による。)。
令和4年における更生保護施設への委託実人員は、6,742人(うち新たに委託を開始した人員5,236人)であった(保護統計年報による。)。更生保護施設へ新たに委託を開始した人員の推移(最近20年間)は、2-5-6-3図のとおりである。
令和3年度における更生保護施設退所者(応急の救護等及び更生緊急保護並びに家庭裁判所からの補導委託のほか、任意保護(更生緊急保護の期間を過ぎた者に対する保護等、国からの委託によらず、被保護者の申出に基づき、更生保護事業を営む者が任意で保護すること)による者を含む。)の更生保護施設における在所期間は、3月未満の者が48.4%、3月以上6月未満の者が38.8%、6月以上1年未満の者が12.1%、1年以上の者が0.7%であり、平均在所日数は81.5日であった。退所先については、借家(34.6%)、就業先(16.6%)の順であった。退所時の職業については、労務作業(41.4%)、サービス業(7.9%)の順であり、無職は38.4%であった(法務省保護局の資料による。)。
更生保護施設では、生活技能訓練(SST)、酒害・薬害教育等を取り入れるなど、処遇の強化に努めており、令和4年度においては、SSTが27施設、酒害・薬害教育が35施設で実施されている(法務省保護局の資料による。)。
また、更生保護施設では、適当な帰住先がなく、かつ、高齢又は障害を有する者を一時的に受け入れ、その特性に配慮しつつ、社会生活に適応するための指導や退所後円滑に福祉サービスを受けるための調整等を行うことを内容とする特別処遇を実施している。特別処遇を行う施設(指定更生保護施設)として、全国で77施設が指定されており(令和5年4月1日現在)、そのうち3施設は、主に少年を受け入れる更生保護施設として、発達障害等の特性に配慮した専門的な処置を行うなど少年処遇の充実を図っている。4年度に特別処遇の対象となったのは、1,861人(前年度比58人(3.2%)増)であった(法務省保護局の資料による。)。
さらに、依存性薬物に対する依存からの回復に重点を置いた処遇を実施する更生保護施設(薬物処遇重点実施更生保護施設)として、全国で25施設が指定されており(令和5年4月1日現在。法務省保護局の資料による。)、薬物処遇に関する専門職員が配置されている。
平成29年度からは、更生保護施設を退所するなどして地域に生活基盤を移した者に対し、更生保護施設に通所させて、継続的に生活相談に乗り、必要な指導や助言を実施したり、薬物依存からの回復支援などを実施したりするフォローアップ事業が行われている。令和3年度からは、施設退所者等の自宅を訪問するなどして継続的な支援を行う訪問支援事業が開始され、令和5年4月1日現在、全国11施設で行われている。4年度におけるフォローアップ事業の委託実人員は905人、訪問支援事業の委託実人員は345人であった(法務省保護局の資料による。)。
このほか、従前の運用では仮釈放期間が比較的短期間である薬物依存のある受刑者について、早期に仮釈放し、一定の期間、更生保護施設等に居住させた上で、地域における支援を自発的に受け続けるための習慣を身に付けられるよう、地域の社会資源と連携した濃密な保護観察処遇を実施する薬物中間処遇が試行されており、9施設で実施されている(令和5年4月1日現在。法務省保護局の資料による。)。