保護観察所では、保護観察対象者が、適切な医療、食事、住居その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を得ることができないため、その改善更生が妨げられるおそれがある場合は、医療機関、福祉機関等から必要な援助を得るように助言・調整を行っているが、その援助が直ちに得られないなどの場合、保護観察対象者に対して、食事、衣料、旅費等を給与若しくは貸与し、又は宿泊場所等の供与を更生保護施設に委託するなどの緊急の措置(応急の救護)を講じている。
また、満期釈放者、保護観察に付されない全部又は一部執行猶予者、起訴猶予者、罰金又は科料の言渡しを受けた者、労役場出場者、少年院退院者・仮退院期間満了者等に対しても、その者の申出に基づいて、応急の救護と同様の措置である更生緊急保護の措置を講じている。更生緊急保護は、刑事上の手続等による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内(特に必要があると認められるときは、更に6月を超えない範囲内)において行うことができる。
2-5-4-1表は、令和4年における応急の救護等(補導援護としての措置を含む。以下この章において同じ。)及び更生緊急保護の措置の実施状況を見たものである。
起訴猶予者、保護観察に付されない全部執行猶予者、罰金又は科料の言渡しを受けた者については、検察庁等と保護観察所が連携し、必要性や相当性が認められる者を対象として、一定の期間重点的な生活指導等を行い、福祉サービス等に係る調整や就労支援等の社会復帰支援を内容とする「起訴猶予者等に係る更生緊急保護の重点実施等」を行っている。令和4年度において、保護観察所が検察庁から事前協議を受け、更生緊急保護の重点実施等を行った対象者は、473人であった(法務省保護局の資料による。)。
地域生活定着支援センター(本章第2節2項参照)により、高齢又は障害のある被疑者・被告人の福祉サービス等の利用調整や釈放後の継続的な援助等を行う「被疑者等支援業務」が実施されていることを踏まえ、保護観察所は、更生緊急保護の重点実施等の対象者のうち、高齢又は障害により福祉サービス等を必要とする者については、本人が支援を希望する場合に、地域生活定着支援センターと連携した支援を行っている。
また、満期釈放者については、再犯防止対策の充実強化に向けて、更生保護施設等の一時的な居場所の確保、更生保護施設を退所した者に対する相談支援の充実(本章第6節2項参照)等の取組を進めている。さらに、保護観察所に社会復帰対策官を配置するなどして、帰住先の確保や地域への定住等に困難が見込まれる矯正施設被収容者に対して、生活環境の調整、出所後の保護観察及び満期釈放となった場合の更生緊急保護における継続的支援を行っている。