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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第三章/七 

七 青少年保護育成条例など

 少年犯罪対策についての実情説明を行なうに当って,省略することのできないのは,一部の地方公共団体が制定している青少年保護育成条例のことと,さらには国民各層の人々により,単に,再犯防止という観点からだけではなく,少年犯罪の発生を未然に防止し,また,積極的には,青少年の健全育成を図るという目的で,さまざまな活動(警察などに対する協力活動のほか,民間独自の活動もある。)が行なわれているということである。以下には,右条例と二,三の民間人による活動について簡単に説明をしておきたい。
(一) 青少年保護育成条例
 青少年の健全育成上有害な社会環境等の規制を目的として,一部の地方公共団体においては,青少年保護育成条例を制定しているが,これは,有害環境排除のための,他の法令の補充的な役割を果していると考えられる。昭和四一年六月末日現在で,この種の条例を制定している都道府県は,二九にのぼっている。
 条例の内容については,都道府県によって,規制の内容,程度などの点で差異がある。III-125表は,規制事項および違反に対する罰則の有無を条例別に示したものであるが,これによると,大多数の都道府県においては,有害興行等の観覧,有害文書・図画の販売等,有害広告物の掲示等,有害玩具類(刀剣類を含む。)等の販売,古物(金属屑を含む。)買受等および物品質受,有害行為の場所の提供または周せん等について,罰則を伴う規制を行なっている。また,深夜外出については,単なる制限条項を設けているものが多い。なお,興行場その他規制の対象となる店舗等への立入調査については,ほとんどの条例がこれを実施することを規定している。

III-125表 青少年の保護育成に関する都道府県条例規制事項等一覧表

(二) 青少年育成国民運動
 青少年育成国民運動は,明日の日本をになう青少年が,健康な身体をもとに,広い視野と正しい見識をつちかい,豊かな情操と高い徳性を磨き,その能力を十分に発揮し,有為の人として成長することが,国家,国民の大きな責任であるとの認識のもとに,青少年自身が,その誇りと責任とを強く自覚することはもとより,国民のすべてが青少年問題に対する関心を広め,政府施策と相呼応して,青少年の健全な育成を図ることを目的とする民間の自主性にもとづいた全国民的な運動であって,さしあたり五か年間の計画で実行されている。
 この運動の推進主体は,昭和四一年五月二七日に結成された青少年育成国民会議である。この運動の事業としては,以下のようなことが計画されている。
(1) 青少年がその誇りと責任についての自覚を高めるための諸活動
(2) 健全な青少年団体およびグループの育成を図り,すべての青少年がこれに参加することを奨励するための諸活動
(3) 勤労青少年の教育,福祉対策を進め,その生活条件等の改善を促進するための諸活動
(4) 体育およびレクリェーションを奨励するための諸活動
(5) 健全育成施設の整備を促進するための諸活動
(6) 家庭教育,学校教育,社会教育等の緊密な連けいを図るための諸活動
(7) 家庭の健全化を図るための諸活動
(8) 青少年の非行防止のための諸活動
(9) 社会環境の浄化を図るための諸活動
(10) その他,この運動の目的を達成するために必要な事業
 そして,犯罪少年に関する直接的対策としては,昭和四一年度において,非行青少年の早期発見,早期補導のために地域ぐるみの体制を確立し,また,再犯防止のために,関係機関,団体と連絡して活動を展開することなどが企画されている。なおこの運動の中央事務局の業務は,当分の間,昭和四一年度から新設された総理府青少年局において処理されることとなっている。
(三) 非行防止地区(地域)活動
 非行防止地区(地域)活動とは,非行多発地域またはいわゆる問題地域などにおいて,非行の防止を目的として,地域内のあらゆる人的,物的資源を動員しようとする一連の活動であって,通常,地区(地域)診断のための基礎調査,非行防止計画の樹立,具体的活動の実施および活動効果の評価の四段階を経て展開されている。
 警察庁調査によれば,昭和四一年四月一日現在で,このような非行防止地区(地域)活動を推進している地区(地域)は,全国で六九六地区(地域)におよんでいる。そして,この活動の推進によって,少年問題に対する地域住民の関心が高まってきたこと,地域内の関係機関,団体等の協力体制がより積極的に進められるようになったことなどの効果があったとされている。
(四) 少年補導センター
 少年補導センターは,少年の非行防止について関係ある機関,団体および民間有志が参加して,少年の非行防止活動をより効果的に実践するための活動拠点であって,昭和二七年京都,大阪に設置されて以来,昭和四一年四月一日現在で,全国二七三か所に設けられるに至った。
 少年補導センターの主な業務は,ぐ犯・不良行為少年の早期発見・早期補導活動ならびにこの活動を効果的に行なうための資料の整備である。そして,前者の業務活動は,街頭補導および少年相談活動の二方法によって実施されており,後者の業務は,街頭補導,問題少年グループ,補導連絡,被害実態,長欠児童などについてのカード資料の整備を主な内容としている。少年補導センターを拠点として実質的な活動に従事する少年補導員は,昭和四一年四月現在,全国で三七,三三二人にのぼっており,大部分は民間有志者である。
(五) 学校,職場と警察の連けい活動
 在学少年および勤労青少年の非行化を未然に防止するために,学校,職場と警察が緊密に連絡することが必要とされるが,このような連絡体制を恒常的に組織化するため,「学校警察連絡協議会」,「職場警察連絡協議会」が相ついで編成されている。
 警察庁の調べによれば,昭和四一年四月一日現在,「学校警察連絡協議会」は,全国で一,八七〇組織であり,加入学校数は三九,三四七校におよんでいる。また,「職場警察連絡協議会」は,一,三四一組織で,加入事業所は二五,〇二六か所となっている。ちなみに,職場警察連絡協議会に加入している事業所中八〇・五%は,従業員五〇人未満である。
(六) B・B・S運動
 非行におちいり,または非行をおかすおそれのある少年のよき「話し相手」となり,ある場合には,かれらの兄や姉の立場に立って,かれらを正しく導くことを目的とする青年の純粋な奉仕運動であって,一九〇四年,アメリカで提唱された。わが国では,昭和二一年,京都の大学生有志によってはじめられて以来,各地にグループが結成され,昭和二七年には,全国組織として日本B・B・S連盟が結成されるにいたった。昭和四〇年三月現在,B・B・S団体五四六,会員数一〇,三九七人(うち,男七,四九八人,女二,八九九人)であって,「ともだち」として指導を受けている非行少年等は,一,七三一人を数えている。
 なお,右のB・B・S団体は,保護観察所の指導のもとに,保護司会,更生保護婦人会等と協力して,地域社会の犯罪予防活動にも寄与しつつある。