素質の面から犯罪の原因を究明しようとした従来の研究は，大別して三つとなる。その一は，人類学的とよびうるものであって，「犯罪者は一つの特別な人種である。」というのがその主張の要点であり，ロンブローゾを代表者とする。その二は，精神病理学的とよびうるものであり，「犯罪は精神的障害である。」との主張をその要点とするが，後述のゴダードなどは，この派に属する。そして，その三は生物学的とよびうるものであり，「犯罪者は，特別の体質生物学的または遺伝生物学的基礎から生ずる。」との主張を要点とし，後述のクレッチマーなどがこの派に属する。以下順次簡単に分説する。