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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第一章/一/5 

5 触法少年およびぐ犯少年等の推移

 触法少年またはぐ犯少年等として,警察が検挙し,または補導した人員および人口比を示すと,III-16表のとおりである。

III-16表 触法少年およびぐ犯少年等の推移(昭和31〜40年)

 まず,触法少年は,昭和三一年には実人員が二九,〇〇三人,人口比(八歳以上一四歳未満の者の人口一,〇〇〇人に対する割合)が二・四であったが,昭和四〇年には実人員が四五,九八三人,人口比が四・五となり,昭和三一年に比較すると約一・九倍に増加している。
 また,ぐ犯少年等は,昭和三一年では補導人員が四五六,四七四人,人口比(八歳以上二〇歳未満の者の人口一,〇〇〇人に対する割合)が二〇・二であったが,昭和四〇年には補導人員が一,三〇九,五〇四人,人口比が五六・五となり,昭和三一年に比較すると約二・八倍に増加している。
 しかし,同表によって最近数年間の動向をみると,触法少年は,おおむね横ばいないし減少の傾向を示しているのに対して,ぐ犯少年等は,増加の傾向を示している。ぐ犯少年等といっても千差万別であり,そのうちには,非行性の進んでいないものも多いことと思うが,それはともかくとして,年間百万人を超える少年が,ぐ犯等の理由で補導の対象となっているということは,注目すべき事実である。そこで以下,さしあたり利用しらる昭和三九年の資料により,ぐ犯少年等の行為ならびにぐ犯少年等の年令別などに関して考察する。
 まず,III-17表によって,ぐ犯少年等の行為種別人員をみると,最も多いものは喫煙で四〇%強,ついで,不健全娯楽,夜遊び,怠学などの順に多く,それぞれ七ないし八%をしめている,不良団加盟,たかり,兇器携帯,婦女誘惑・いたずらなどの行為はきわめて少ない。ただし,不良団加盟以下の行為は非行性のかなり進んだ少年にみられるものであるとともに,このような行為のある少年の多くは,他の犯罪をも実行し,他種の非行少年として処理されているであろうと推定される。さらに,同表によって性別をみると,総数では男子が九三%で,女子は,七%にすぎない。ちなみに,少年の刑法犯における男女の比率も,おおむね右のような比率である。行為別にみると,女子の比率の高い行為は,家出,怠学,不純異性交遊,不良交友,盛り場はいかいなどである。これに対して,男子に多いのは,飲酒,喫煙,不健全娯楽などである。凶器携帯,婦女誘惑・いたずらなどの行為はきわめて少ないが,これらはほとんど男子によるものである。

III-17表 ぐ犯少年等行為種別人員(昭和39年)

 つぎに,III-18表によって,主要なぐ犯行為等につき昭和三〇年,三五年および三九年の推移をみると,昭和三〇年に比較して実数の上ではどの行為も増加しているが,各年の構成比率からみると,昭和三九年に増加の著しいものは,喫煙である。不健全娯楽も増勢にあるが,怠学,盛り場はいかい,家出などは,比率の上ではむしろ減少している。

III-18表 主なぐ犯行為等の推移(昭和30,35,39年)

 つぎに,ぐ犯少年等の年令別などについて概観する。
 III-19表は,昭和三九年中に全国の警察で補導の対象となったぐ犯少年等の年令別および性別の人員を示している。これによると,総数で最も多い年令層は,一七歳で二二・五%,ついで,一八歳の二〇・二%,一六歳の一七・八%などの順となっている。ぐ犯少年等の六〇%強が一六歳から一八歳までの年代の少年によって占められているわけである。男女別にみると,男子の場合は,一七歳以上が五五%を占めているのに対して,女子のそれは,三九%である。逆に,一六歳以下の女子は六一%と多く,男女間に明らかな差が認められる。

III-19表 ぐ犯少年等年令別・性別人員(昭和39年)

 つぎに,少年の身分別をみると,III-20表に示すように,学生・生徒および有職少年はほぼ同数であって,それぞれ六〇〇,〇〇〇人前後である。無職少年も全体の八・九%をしめている。男女別にみると,女子に学生・生徒および無職少年が多く,男子に有職少年の割合が高い。

III-20表 ぐ犯少年等性別・身分別人員(昭和39年)

 右に関連して,昭和三九年中に家庭裁判所でぐ犯として処理された少年について,家庭の生活程度,不良交友および前回処分の有無別に検討すると,ぐ犯少年の場合は,すでに述べた窃盗少年および粗暴犯少年に比し,家庭の生活程度が貧困または要扶助者の割合が高く,不良交友のある者の割合もまた高い。前回処分のある者の割合は,窃盗少年より低く,粗暴犯少年より高い。このような事実にかんがみるに,ぐ犯だからといって適切な措置を欠くならば,多くの場合,成行は楽観を許さないと考えられる。
 最後に,III-21表は,昭和三九年のぐ犯少年等についてその措置状況をみたものであるが,これによると,全体の九九・一%が警察限りの措置で終っており,児童相談所に通告し,または家庭裁判所に送致された者は,それぞれ一%に充たない。少年のぐ犯行為等について,公的機関が一々深く関与することが適当かどうかは一つの問題であろうが,それはそれとして,この統計数字の示す成果がどうなっているかについても,継続的に反省検討が加えられねばならないであろう。

III-21表 ぐ犯少年等の措置(昭和39年)