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 昭和41年版 犯罪白書 第一編/第一章/三/2 

2 女子犯罪の特色

 女子の犯罪は,男子のそれに比較してかなりの特徴的差異を示す。たとえば,女子は一般に体力も弱く,心理的には粗暴ではないというためであろうか,暴力を用いる犯罪は少ない。そこで,罪名別に男子の犯罪と比較することによって,女子の犯罪の特色をみよう。
 I-34表は,昭和三〇年,三五年,三九年における刑法犯通常第一審有罪人員を主要罪名別男女別に示すとともに,男子一〇〇人に対する女子の割合を示したものである。

I-34表 男女別刑法犯通常第一審主要罪名別有罪人員(昭和30,35,39年)

 いずれの年次についてみても,女子の割合の高いのは,まずえい児殺である。これはえい児をいだいて困窮するのは女子であるということによるのかも知れない。しかし,詳細は今後の研究に待ちたい。えい児殺についで,殺人,放火等が女子に多くみられる。近年では,殺人のうちでも尊属殺人の割合がとくに高い。なお,女子の殺人においては,犯行の手段が男子とは異なり,毒物を使用する場合が多く,また,睡眠中の機会などを利用して絞やく殺を行なうなどの特徴がみられ,そのために,殺人は,体力の弱い女子でも遂行しうる犯罪となっている。
 女子の放火は,主としてえん恨や嫉妬などにかられての犯行であって,男子では暴力的な手段に訴えるような場合に,女子は,このような方法を用いるように思われる。
 わが国で,殺人や放火が女子に比較的多くみられるのは,家族制度の影響やこれに伴う人間関係の障害に起因する場合が多いようである。
 絶対数という見地からいえば,女子の犯罪もまた窃盗が最も多い。そして,詐欺がこれについでいる。また,恐かつは,女子にはきわめて少ない犯罪であったが,最近その数は増加の傾向にあり,その増加割合は男子よりはるかに高い。