過失犯罪の主要なものには，業務上過失致死傷(重過失致死傷を含む。以下同じ。)，その他の過失致死傷および失火(業務上失火および重過失失火を含む。以下同じ。)がある。I-21表は最近の過失記の検挙人員の推移を示したものであるが，失火は，昭和三六年を頂点として減少傾向にあったところ，昭和四〇年にはかなり大幅に増加しており，単純過失致死傷は，逐年急激に減少している。これに対して，業務上過失致死傷の増加は，まことにとどまるところを知らない感がある。これは，ほとんどが自動車交通による人身事故にかかるものであり，道路交通法違反の急増とともに，現下の重大な社会問題の一つとなっている。昭和二〇年以降の業務上過失致死傷の検挙人員の増加状況をグラフで示すと，I-4図のとおりであるが，この曲線をみただけでも，事の重大性を感じないわけにはいかない。

I-21表　過失犯罪検挙人員(昭和35〜40年)

I-4図　業務上過失致死傷検挙人員の推移(昭和20〜40年)

　しかし，この点は，後に交通犯罪の項で改めてとり上げるので，ここでは，検察庁において既済となった業務上過失致死傷と重過失致死傷のうち，少年の占める割合についてふれておくにとどめることとする。I-22表に示すとおり，少年の占める割合は，業務上過失致死傷では，約一六％から約二四％で，その比率は比較的低いのに対し，重過失致死傷では，四四％から約四七％という高率を示しているが，後者の事件の大部分は，無免許運転による人身事故である。

I-22表　既済事件の受理時少年人員調べ(昭和37〜39年)