第一審における裁判員裁判の新規受理人員総数は、令和2年(1,004人)は前年比129人(11.4%)減、3年(793人)は211人(21.0%)減であったところ、2年は覚醒剤取締法違反(前年比175人減)における総数の減少を上回る減少が、3年は同法違反(同49人減)の減少に加え強盗致傷(同168人減)及び強盗致死(同21人減)の減少が、それぞれ大きく影響している。覚醒剤取締法違反については密輸入事案の減少が、強盗事案については路上強盗や住宅等への侵入強盗の減少が考えられるところであり、いずれも新型コロナウイルス感染症による影響があったと考えられる。
第一審における裁判員裁判の終局処理人員は、初めての緊急事態宣言が発出された令和2年4月及び5月に同年3月以前と比べて大きく減少したが、これは同年3月から5月までの間に指定されていた裁判員等選任手続期日のうち184件(同年の月平均新規受理人員は83.7人)を取り消すなど、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策を採ったためである。多数の候補者が集められる裁判員等選任手続については、同感染症の実態が明らかとなっていない段階で実施するリスクが大きかったものと考えられ、やむを得ない措置であったと言える。他方で、同年6月以降は、特に同年7月から10月において、裁判員裁判終局処理人員が前年同月を上回るなど(それぞれ前年同月比27人増、37人増、12人増、42人増)、感染防止策を講じつつ、できる限り多くの事件処理に努めた状況がうかがえる。