前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和4年版 犯罪白書 第7編/第4章/第3節/1

第3節 矯正
1 感染症予防・感染拡大防止策

矯正施設の職員及び被収容者で初めて新型コロナウイルス感染症の感染者が確認された令和2年4月以降の矯正施設における感染者の推移を職員・被収容者別に見ると、7-4-3-1図のとおりである。同年11月から4年6月にかけて、複数の矯正施設でクラスター(患者集団)が発生した。感染者等が発生し、多くの職員を健康観察の対象にするなどして職員が不足した場合には、近隣の矯正施設からの職員だけでなく、必要により、特別機動警備隊(矯正施設において非常事態が発生した場合に、迅速かつ的確に対処するため、平成31年4月に発足した部隊。コラム6参照)の隊員を派遣するなどして対応した。法務省矯正局は、訓練はもとより、感染者等が発生した施設における応援勤務の経験を積んだ同隊の隊員について、感染症予防対策や感染者等が発生した場合の感染症拡大防止対策の助言・指導のために、感染拡大時のリスクが高い矯正施設に派遣するなどし、新型コロナウイルス感染症への対策の強化・推進に努めた。

7-4-3-1図 矯正施設における感染者の発生状況(月別)
7-4-3-1図 矯正施設における感染者の発生状況(月別)
Excel形式のファイルはこちら

矯正施設における新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、法務省矯正局は、令和2年4月28日、「矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防止対策ガイドライン」(以下この節において「ガイドライン」という。)を矯正施設に通知した(同年6月及び11月に改訂)。矯正施設は、ガイドラインに基づき、マスクの着用、手洗い、手指消毒、複数の者が使用する場所・備品の消毒、換気、食事等の場面における対面での会話の回避等の対策を講じたほか、在宅勤務・テレワークの活用により、出勤職員数を抑制する措置を執った。その後、同年12月以降のクラスターの発生を受け、矯正施設では、体調不良により出勤を抑制した職員の勤務再開の際の抗原検査の実施や、被収容者の体調不良時の積極的な抗原検査の実施など、感染防止対策が更に強化された。

令和3年2月からは、国内でも、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種が開始された。予防接種法(昭和23年法律第68号)において、予防接種の実施主体は、住民登録地の市町村(特別区を含む。)の長とされているところ、被収容者の多くは収容されている矯正施設の所在地に住民登録がなく、住所地外での接種とならざるを得ない。そのため、法務省と厚生労働省、各矯正施設とその所在地の各市町村との間で緊密な調整を行い、希望する被収容者に対する予防接種が実施された。