令和2年当初、新型コロナウイルス感染症の発生を受け、日本国内において衛生マスクや消毒等用アルコールが不足するようになり、これらの買占めを行った者がインターネット上で高額転売をするなどの社会問題が生じるようになった。その後、国からの増産要請や補助事業により衛生マスクや消毒等用アルコールが増産されるに至ったが、需給バランスの早期の回復が見込めない状態となり、社会的な混乱が続くこととなった。国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)は、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とするものであるところ、前記のとおり、衛生マスクや消毒等用アルコールの供給がひっ迫したことから、国民生活の安定を確保するべく、同法施行令(昭和49年政令第4号)が改正され、衛生マスク及び消毒等用アルコール(以下この項において「衛生マスク等」という。)について、不特定の相手方に対し売り渡す者から購入した者は、当該購入した衛生マスク等を、不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスク等の売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであって、当該衛生マスク等の購入価格を超える価格による譲渡をしてはならないとされ、これに違反した者は処罰対象とされた(衛生マスクにつき、令和2年3月15日から同年8月28日まで。消毒等用アルコールにつき、同年5月26日から同年8月28日まで)。
新型コロナウイルス感染症に関連した同法違反につき、令和3年末までの検挙事件数は、20事件であった(警察庁生活安全局の資料による。)。