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令和4年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/1

第3章 コロナ禍における犯罪の動向等
第1節 新型コロナウイルス感染症に関連する犯罪等
1 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に便乗した犯罪

これまでも大規模自然災害等の国民生活に重大な影響が生じる事象が発生すると、人々の不安や窮状につけ込むような手口の犯罪が発生し、社会問題となってきた。今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大下においても、多くの国民が、自らや家族の感染、生活の変化、仕事や収入等に不安を感じたり、実際に収入が減少したりする事態が生じ、これら人々の不安や窮状につけ込んだ犯罪が数多く発生した。具体的には、<1>違法に新型コロナウイルス感染症予防や治療の効果をうたった広告を行うなどの保健衛生事犯(薬事関係事犯(医薬品医療機器等法違反、薬剤師法(昭和35年法律第146号)違反等に係る事犯をいう。)、医事関係事犯(医師法(昭和23年法律第201号)違反、歯科医師法(昭和23年法律第202号)違反等に係る事犯をいう。)及び公衆衛生関係事犯(食品衛生法(昭和22年法律第233号)違反等に係る事犯をいう。)をいう。以下この項において同じ。)、<2>新型コロナウイルス感染症に関連した様々な事象を口実とする手口による特殊詐欺を始めとした詐欺事案、<3>新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者等を対象とした違法な高金利貸付けの事案等のヤミ金融事犯(無登録・高金利事犯(貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等))及びヤミ金融関連事犯(貸金業に関連した犯罪収益移転防止法違反、詐欺、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号。いわゆる携帯電話不正利用防止法)違反等に係る事犯をいう。)をいう。以下この項において同じ。)及び<4>新型コロナウイルス感染症に関連したサイバー犯罪等がある。

(1)保健衛生事犯

新型コロナウイルス感染症に対する健康不安等につけ込んだ保健衛生事犯としては、厚生労働大臣の承認を受けていない医薬品について「新型コロナウイルス抑制効果がある。」などと薬効をうたう広告をした事案や、厚生労働大臣の許可を受けずに製造された医薬品の販売等をした事案等の医薬品医療機器等法違反事件、医師免許を持たない者が、同感染症に関するPCR検査のための検体採取に当たり、医行為を行った医師法違反事件等が発生した。同感染症に関連した保健衛生事犯の検挙事件数(余罪を含む一連の事件として警察が検挙したものをいう。以下この節において同じ。)は、令和2年は14事件、3年は7事件であった(警察庁生活安全局の資料による。)。

(2)特殊詐欺を始めとした詐欺事案

大規模な自然災害が発生した後には、災害に便乗した義援金・寄付金などをかたった詐欺が発生するなど、特殊詐欺を実行する犯罪組織は、様々な社会の出来事に便乗した犯行を行う傾向があるところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下においても、これに伴う人々の生活に対する不安や窮状につけ込んだ様々な手口による特殊詐欺事案が確認された。具体的には、行政機関の職員を名のる男から、同感染症関連の給付金の振込みに通帳等が必要であるから、職員を受取に向かわせる旨の電話を受けた事案や、息子を名のる男から、「会社を辞めた人が取引先から1,000万円を借りたが、コロナでうまくいかず行方不明になった。保証人の自分が返さないといけなくなった。」などと電話を受け、現金300万円をだまし取られた事案等が発生した。同感染症の感染拡大下において確認された特殊詐欺の予兆電話は様々なものがあり、「コロナの検査キットを送りますので家族構成を教えてください。」などと言って、新型コロナウイルス検査をかたったもの、「ワクチンが接種できるようになりました。後日返還するので、まず10万円を振り込んでください。」などと言って、ワクチンの優先接種をかたったもの、「コロナで会社が困っていれば500万から3,000万まで融資します。」などと言って、融資をかたったものなどが全国で相次いで確認された。これら同感染症に関連した特殊詐欺事案の認知件数は、令和2年は55件(被害額は約1億円)、3年は44件(被害額は約1億1,000万円)であり、検挙件数及び検挙人員は、2年は検挙件数13件、検挙人員16人、3年は検挙件数4件、検挙人員7人であった(警察庁刑事局の資料による。)。

また、特殊詐欺以外にも、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、マスクが品薄状態になった際には、インターネット上のショッピングサイトにおいてマスクの販売をかたり、利用者が代金を支払っても商品を送ってこない事案等も確認された。

(3)ヤミ金融事犯

新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、同感染症の影響等によって資金繰りが厳しくなった経営者に対し、法定利息を大幅に超える利息を受領する約定で金銭を貸し付ける契約をした出資法違反等の事件も発生しており、同感染症に関連したヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員は、令和2年は検挙事件数5事件、検挙人員23人、3年は検挙事件数4事件、検挙人員11人であった(警察庁生活安全局の資料による。)。

(4)サイバー犯罪等

新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、いわゆるフィッシング(実在する企業・団体等を装って電子メールを送り、その企業・団体等のウェブサイトに見せかけて作成した偽のウェブサイト(フィッシングサイト)を受信者が閲覧するよう誘導し、当該サイトでクレジットカード番号や識別符号を入力させて金融情報や個人情報を不正に入手する行為)の目的で、行政機関を装い、ワクチン接種や給付金の申請に関連した不審な電子メールを送付してフィッシングサイトへ誘導するなど、同感染症の感染拡大に乗じたサイバー犯罪やその疑いがある事案の発生も確認された。同感染症に関連するサイバー犯罪であると疑われる事案は、令和2年は887件、3年は257件確認された(警察庁サイバー警察局の資料による。)。