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令和4年版 犯罪白書 第6編/第2章/第1節/5

5 矯正・更生保護段階等における被害者等の関与

被害者等が加害者たる受刑者の処遇状況等の通知を希望し、これが相当と認められる場合には、検察官は、刑事施設の長からの通知に基づき、受刑者の処遇状況等に関する事項を当該被害者等に通知している(被害者等通知制度)。令和3年は、刑の執行終了予定時期について延べ1万6,150件(目撃者等に対する通知を含む。)、刑事施設における処遇状況について延べ1万7,903件、受刑者の釈放について延べ2,635件(目撃者等に対する通知を含む。)、全部又は一部執行猶予の言渡しの取消しについて延べ183件の通知がそれぞれ行われた(法務省刑事局の資料による。)。

また、再被害防止の観点から転居等の措置を講じる必要があるため、被害者等が特に通知を希望する場合で、検察官が相当と認めるときには、受刑者の釈放予定時期及び帰住予定地等についての通知を行う制度も実施されており、令和3年は、418人に対して通知が行われた(目撃者等に対する通知を含む。法務省刑事局の資料による。)。さらに、被害者等通知制度の一環として、令和2年10月21日から、被害者等からの希望に基づき、それらの者に対し、死刑を執行した事実を通知することとされた。

なお、令和4年法律第67号による刑事収容施設法の改正(第2編第1章1項(1)参照)により、被害者等の心情等の考慮に係る規定が整備された(令和5年12月までに施行)。これにより、刑事施設の長は、<1>被害者等から被害に関する心情等を述べたい旨の申出があったときは、当該心情等を聴取すること、<2>受刑者の処遇要領(同編第4章第3節1項(1)参照)を策定するに当たっては、被害者等の心情等を考慮すること、<3>被害者等から聴取した心情等を受刑者に伝達することを希望する旨の申出があったときは、改善指導(同節3項(2)参照)を行うに当たり、当該心情等を受刑者に伝達すること、などとされた。

更生保護においては、<1>地方更生保護委員会が、仮釈放審理の開始・結果に関する事項について、保護観察所の長が、仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の保護観察の開始・処遇状況・終了に関する事項について、それぞれ被害者等に通知を行っている(被害者等通知制度)。また、<2>地方更生保護委員会が、刑事施設からの仮釈放及び少年院からの仮退院の審理において、被害者等から仮釈放・仮退院に関する意見等を聴取する意見等聴取制度、<3>保護観察所が、被害者等から被害に関する心情等を聴取し、保護観察中の加害者に伝達する心情等伝達制度、<4>主に保護観察所が、被害者等からの相談に応じ、関係機関等の紹介等を行う相談・支援の制度が実施されている。

令和3年における運用状況は、<1>のうち、仮釈放審理に関する事項について延べ4,014件、保護観察状況に関する事項について延べ6,650件(保護処分を受けた少年の仮退院審理・保護観察状況に関する通知については、本節6項参照)、<2>が延べ329件(うち仮退院の審理における件数21件)、<3>が延べ182件(うち加害者が保護処分のものの件数33件)、<4>が延べ1,634件であった(法務省保護局の資料による。)。

なお、令和4年4月以降、地方更生保護委員会は、保護処分時に特定少年であり、2年の保護観察に付された者が少年院に収容された場合の退院の審理においても、被害者等からの申出に応じて、当該退院に関する意見等を聴取することとしている。

さらに、令和4年法律第67号による更生保護法の改正(第2編第1章1項(1)参照)により、被害者等の心情等を踏まえた処遇等についての規定が整備された(令和5年12月までに施行)。これにより、<1>更生保護法の規定により執る措置は、被害者等の被害に関する心情、被害者等の置かれている状況等を十分に考慮して行うこととされた。また、<2>地方更生保護委員会が行う被害者等からの意見等の聴取事項として、対象者の仮釈放中の保護観察及び生活環境の調整に関する意見を加えること等や、<3>心情等伝達制度に、被害者等から被害に関する心情等を述べたい旨の申出があったときは、当該心情等を聴取することを追加すること(心情等聴取・伝達制度とすること)、<4>指導監督の方法として、被害者等の被害の回復又は軽減に誠実に努めるよう必要な指示等の措置を執ることを追加することなどとされた。

心神喪失者等医療観察法に定める対象行為(第4編第10章第3節1項参照)の被害者等については、平成30年7月から、保護観察所において、当該被害者等が希望する場合には、被害者等に対し、対象者の処遇段階等に関する情報を提供しており、令和3年における情報提供件数は29件であった(法務省保護局の資料による。)。