懲役受刑者には、法律上、作業が義務付けられている(労役場留置者も同様である。)。このほか、禁錮受刑者及び拘留受刑者も希望により作業を行うことができる。令和3年度における作業の一日平均就業人員は、3万7,035人であった。また、禁錮受刑者は、4年3月末現在で、79.8%が作業に従事していた(法務省矯正局の資料による。)。
受刑者は、作業として職業訓練を受けることがあるほか、生産作業(物品を製作する作業及び労務を提供する作業で、木工、印刷、洋裁、金属等の業種がある。)、社会貢献作業(労務を提供する作業であって、公園等の除草作業等社会に貢献していることを受刑者が実感することにより、その改善更生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認める作業)、自営作業(刑事施設における炊事、清掃、介助、矯正施設の建物の修繕等の作業)の中から、受刑者の希望も参酌し、適性に応じて指定される。なお、令和3年度において社会貢献作業を実施した施設数及び対象受刑者数は、31庁(刑務支所を含む。)276人であった(法務省矯正局の資料による。)。
作業は、刑事施設内で行うものが大部分であるが、刑事施設が管理する構外作業場で行うものもあり、さらに、刑事施設の外の事業所の協力を得て、受刑者を職員の同行なしに、その事業所に通勤させて業務に従事させる(職業訓練を受けさせることを含む。)こともある(外部通勤作業)。令和4年3月末現在、外部通勤作業を実施しているのは、2庁4人であった(法務省矯正局の資料による。)。なお、前記の外出、外泊及び外部通勤作業の運用に当たっては、GPS機器が活用されている。
作業の収入は、全て国庫に帰属する。令和3年度における作業による歳入額は、約26億6,000万円であった(法務省矯正局の資料による。)。
他方、受刑者には、従事した作業に応じ、作業報奨金が原則として釈放時に支給される。作業報奨金に充てられる金額(予算額)は、令和3年度には、一人1か月当たり平均で4,516円であった(法務省矯正局の資料による。)。また、同年の出所受刑者が出所時に支給された作業報奨金の金額を見ると、5万円を超える者が37.4%、1万円以下の者が16.8%であった(矯正統計年報による。)。
刑事施設では、受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ、又は職業上有用な知識や技能を習得させるために、職業訓練を実施している。職業訓練には、総合訓練、集合訓練及び自庁訓練の三つの方法がある。総合訓練は全国の刑事施設から、集合訓練は主に各矯正管区単位で、自庁訓練は刑事施設ごとに、それぞれ適格者を選定して実施している。男性受刑者に対する総合訓練は、同施設として指定された7庁(山形、福井、山口及び松山の各刑務所並びに函館、川越及び佐賀の各少年刑務所)で実施している。女性受刑者に対する職業訓練は、各女性施設で実施している一部の職業訓練種目について、他の女性施設からも希望者を募集して実施している。
刑事施設では、令和3年度には、ビジネススキル科、溶接科、フォークリフト運転科、情報処理技術科等のほか、同年度に新たに開講されたコールセンター科、調剤・介護事務科及び販売戦略科を合わせ合計56種目の職業訓練が実施され、1万957人がこれを修了し、溶接技能者、ボイラー技士、情報処理技術者等の資格又は免許を取得した者は、総数で6,413人であった(法務省矯正局の資料による。)。
刑事施設では、出所後の就労先への定着を図り、再犯防止につなげていくことを目的として、在所中に内定を受けた者等を対象に、内定を受けた事業所等において一定期間就労を体験させる職場体験制度が職業訓練の一環として位置付けられた上で実施されている。