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令和3年版 犯罪白書 第8編/第6章/第3節/2

2 特殊詐欺事犯者調査の結果
(1)特殊詐欺事犯者(確定記録調査対象者)の特徴

確定記録調査対象者(特殊詐欺事犯者(全対象者の中で,犯行の手口に特殊詐欺が含まれている者)のうち東京地方裁判所,横浜地方裁判所,さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者)に関し,その行った特殊詐欺事件を犯行類型別に見ると,オレオレ詐欺が約6割を占めて最も多かった。架け子が詐称した身分については,家族・親族を詐称した事件が約6割であったが,企業等の社員・従業員も4割弱に上っていた。特殊詐欺は,役割分担した上で組織的に敢行されるが,確定記録調査対象者を役割類型別に見ると,「主犯・指示役」9.7%,「架け子」28.1%,「犯行準備役」15.8%,「受け子・出し子」46.4%であった。役割類型別の特徴を見ると,「架け子」,「犯行準備役」及び「受け子・出し子」は,いずれも30歳未満の者が過半数を占めた一方,「主犯・指示役」は,30歳代の者が過半数を占めた。いずれの役割類型でも,前歴を有する者が6割を超えたが,同種のものを含む前歴を有する者の構成比は,最も高い「犯行準備役」でも2割強であった。また,いずれの役割類型でも,保護処分歴を有する者が3割弱から4割弱を占めた。暴力団加入状況を見ると,構成員,元構成員又は準構成員・周辺者の構成比は,「主犯・指示役」及び「犯行準備役」では半分弱を占めた上,「架け子」及び「受け子・出し子」でも1割前後を占めており,暴力団が,特殊詐欺を実行する犯罪組織,とりわけ犯行を指示する立場に深く関与しているという実態が垣間見える。特殊詐欺の事件数では,「主犯・指示役」及び「架け子」では,5件以上の者がいずれも4割強を占めた一方,「犯行準備役」及び「受け子・出し子」では,1件の者がそれぞれ45.2%,54.9%であった。特殊詐欺に及んだ動機・理由では,いずれの役割類型についても,「金ほしさ」及び「友人等からの勧誘」の割合が突出して高かったが,「主犯・指示役」では「所属組織の方針」が,「受け子・出し子」では「軽く考えていた」,「だまされた・脅された」及び「生活困窮」の割合が,それぞれ他の役割類型よりも高かった。特殊詐欺に及んだ背景事情については,いずれの役割類型も,「無職・収入減」,「不良交友」及び「借金」の割合が高く,特に,「受け子・出し子」では,「無職・収入減」が70.7%と顕著に高かった。共犯者がいる確定記録調査対象者の報酬については,いずれの役割類型でも,報酬の有無が不詳の者を除き,報酬があった者の構成比が9割を超えた。その報酬額については,「主犯・指示役」では,100万円以上の者の構成比が4割強であったのに対し,「受け子・出し子」では,100万円以上の者の構成比は2.4%にとどまり,約束のみで実際には報酬を受け取っていない者が過半数に上っている。「受け子・出し子」は,金ほしさから特殊詐欺に及んだ者が多いが,実際には,期待したとおりの報酬を得るに至る前に検挙される例が多いものと推測される。

確定記録調査対象者の有期の懲役の科刑状況別構成比を見ると,総数では,全部実刑の者が約3分の2を占めた。特殊詐欺の事件数別に見ると,全部実刑の者の構成比は,1件でも3分の1を超えており,2件,3件,4件及び5件以上では,70%台前半から90%台前半に及ぶ。全部実刑の者の刑期は,1件から4件までは,いずれも2年以上3年以下の者の構成比が高く,5件以上では,3年を超え4年以下の者の構成比が最も高い。5件以上では,5年を超え10年以下の者も4分の1を占めた。全部執行猶予の者の刑期については,2年未満が2人(いずれも事件数1件のもの)いるのみであり,その余は2年以上3年以下であった。役割類型別に見ると,全部実刑の者の構成比は,「主犯・指示役」が最も高く,次いで,「架け子」,「犯行準備役」,「受け子・出し子」の順であった。5年を超え10年以下の全部実刑の者及び4年を超え5年以下の全部実刑の者は,「主犯・指示役」,「架け子」及び「犯行準備役」で,それぞれ2割前後を占めた。

(2)特殊詐欺事件の被害者の特徴

特殊詐欺事件の被害者について見ると,65歳以上の高齢者が9割弱であり,特に,75歳以上の者が6割弱を占めた。事件当時の被害者の居住状況を見ると,65~69歳の者及び70歳以上の者は,それぞれ約3分の1が単身居住であり,前者は約3分の1,後者は約4分の1が,同居相手が配偶者のみであった。犯人グループから被害者への最初の連絡方法は,9割弱が固定電話であった。被害者が相談(被害者が,犯人グループからの連絡を受けてから金品を詐取されるまでの間に,連絡を受けた内容を誰かに話すこと)した事件は,既遂事件では15.7%であったが,未遂事件では81.0%に上った。既遂事件は,約7割が「同居の家族・親族」に相談したが,金品を詐取されるに至っていた。未遂事件では,3割弱が「同居していない家族・親族」に相談しており,「金融機関職員」に相談した者も7.4%であった。また,特殊詐欺事件(未遂事件)について,最初に詐欺に気付いた者を見ると,被害者自身が過半数を占めていたが,「同居の親族・家族」(14.0%),「金融機関職員」(12.0%)及び「同居していない家族・親族」(9.0%)であった事件も一定数存在した。