全対象者調査では,全対象者のうち,調査対象事件の第一審の判決言渡日から4年間に再び有罪判決の言渡しを受けた者の有無等を見た。再犯の有無を男女別に見ると,女性よりも男性の方が,再犯ありの構成比は高かった。年齢層別では,再犯ありの構成比は,65歳以上の者が最も高かったが,いずれの年齢層も傾向に大きな差はなかった。前科を有する者は,前科を有しない者と比較して,再犯ありの構成比が顕著に高かった。出所受刑者の再犯ありの構成比は,平均再犯可能期間が約半分であるにもかかわらず,単純執行猶予者よりも高かった。保護観察付全部執行猶予者の再犯ありの構成比は,単純執行猶予者と比べて顕著に高かった。年齢層別に見ると,出所受刑者では,50~64歳の者及び65歳以上の者は,いずれも約4人に1人が再犯に及んでいた。全部執行猶予者では,再犯ありの構成比が最も高いのは30歳未満の者(17.5%)であった。なお,詐欺の前科の有無について見ると,詐欺の前科を有する者は,出所受刑者では,再犯ありの総数の5割以上であったが,全部執行猶予者では,再犯ありの総数の1割弱であった。犯行の手口別では,再犯ありの構成比は,無銭飲食等が5割を超えた一方,特殊詐欺は約1割であった。無銭飲食等では,再犯の判決罪名に詐欺を含む者が約3割に及んだ。全部執行猶予者について,その再犯期間に係る累積再犯率を見ると,保護観察付全部執行猶予者は,調査対象事件の第一審判決後13か月(27.7%)まで急激に上昇し,その後は上昇のペースがやや緩やかになり,36か月(40.4%)を超えると横ばいになっていた一方,単純執行猶予者については,最初から上昇のペースが緩やかであった。無銭飲食等の全部執行猶予者は,調査対象事件の第一審判決後2か月までは再犯に及んだ者はいなかったものの,その後,13か月(39.5%)までの間に,累積再犯率が急激に上昇していた。
再犯調査対象者(全対象者調査で把握した再犯ありの者のうち,調査対象事件により全部執行猶予の判決の言渡しを受けた者であり,その後,約3年間に再犯に及び,再び有罪判決の言渡しを受けた者)の属性を見ると,9割以上は男性であった。再犯の犯行時の年齢層別では,30歳未満の者が最も多かった,調査対象事件について見ると,刑の種類では,保護観察付全部執行猶予が4分の1,単純執行猶予が4分の3であった。犯行の手口では,無銭飲食等が最も多く,特殊詐欺がこれに続いた。再犯調査対象者については,調査対象事件で被害回復・弁償や示談を行っていた者の構成比が,全対象者と比べて低かった。再犯調査対象者の再犯の罪名(重複計上による。)は,窃盗(32.1%)の割合が最も高く,詐欺(27.4%)がこれに続いた。再犯の罪名が詐欺であった者の犯行の手口別構成比では,無銭飲食等(34.8%)が最も高く,特殊詐欺(21.7%)がこれに続いた。調査対象事件と再犯が同じ手口であった者の人員(13人)のうち,7人が無銭飲食等,3人が特殊詐欺であった。再犯調査対象者のうち,約2割が住居なしであり,約7割が無職であった。再犯調査対象者が再犯に及んだ動機・理由は,「金ほしさ」の割合が最も高く,次いで,「生活困窮」,「軽く考えていた」の順であった。再犯の動機・理由に「金ほしさ」があった者は,特殊詐欺の構成比が最も高く,「生活困窮」があった者は,無銭飲食等の構成比が最も高かった。