前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和3年版 犯罪白書 第8編/第5章/第4節/1

1 全対象者調査による再犯の有無

詐欺事犯者の再犯状況と再犯に関連する要因を概観するため,全対象者のうち,調査対象事件の第一審の判決言渡日(上訴した者のうち,上訴審により第一審の実刑判決が破棄されて全部執行猶予判決となった者(17人)は,上訴審の判決言渡日とする。以下この項において同じ。)から4年間に再び有罪判決の言渡しを受けた者(最終的に有罪の裁判が確定した者に限る。)の有無等を見る。全対象者調査における「再犯」とは,罰金以上の刑で再び有罪判決の言渡しを受けて裁判が確定した事件をいう(道交違反又は道路交通取締法,同法施行令若しくは道路交通取締令の各違反により,罰金以下の刑に処せられた事件を除く。)。ただし,全対象者調査は,裁判書等の資料に基づいた調査にとどまっているため,この項における「再犯」には,調査対象事件の裁判確定前の余罪又は調査対象事件により実刑に処せられた者がその受刑中に犯した事件が含まれている可能性があり,厳密な意味での再犯状況ではないことに留意する必要がある。また,同様の理由により,再犯の犯行日を調査することが困難であったため,調査対象事件の第一審の判決言渡日から4年間に,再犯の第一審の判決言渡しを受けていることをもって,再犯に及んだものと判断した。

なお,調査対象事件により全部執行猶予の言渡しを受けた者については,社会内で再犯に及ぶ可能性があった期間(以下この節において「再犯可能期間」という。)を4年間確保できる一方,調査対象事件により実刑に処せられた者の中には,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点においてもいまだ受刑している者がおり,そのような者については再犯に関する調査の対象に含まなかった。さらに,実刑に処せられて受刑し,判決言渡日から4年が経過する前に刑事施設から出所した者についても,出所日が異なることから,再犯可能期間には長短がある。したがって,この項において,全体的な再犯の傾向等を把握するために,出所受刑者・全部執行猶予者別に再犯の状況を見ることがあるが,その場合には,比較する対象者の再犯可能期間が異なっていることに留意する必要がある。

全対象者調査の結果,全対象者1,343人のうち,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除いた1,231人について,再犯の有無別人員を見ると,再犯ありは194人(15.8%)であった。このうち,詐欺による再犯のある者は,74人(再犯ありの38.1%)であった。また,再犯による有罪判決の言渡しを受けた後,2回目の再犯に及び,再び罰金以上の刑で有罪判決の言渡しを受けて裁判が確定した者は,26人(再犯ありの13.4%)であった。

(1)全対象者

全対象者の再犯の有無別構成比を属性別に見ると,8-5-4-1図のとおりである。

男女別に見ると,女性の再犯ありの構成比は,1割に満たず,男性と比べて低かった。

年齢層別に見ると,再犯ありの構成比は,65歳以上の者が最も高かったが,いずれの年齢層も2割に満たず,その傾向に大きな差はなかった。なお,調査対象事件における犯行時の年齢の平均は,再犯ありの者が39.1歳,再犯なしの者が38.2歳であり,それぞれ最高年齢は,再犯ありの者が75歳,再犯なしの者が80歳,最低年齢は,再犯ありの者が20歳,再犯なしの者が18歳であった。

調査対象事件による検挙時の前科の有無別に見ると,前科を有する者の再犯ありの構成比は,前科を有しない者の構成比と比べて顕著に高かった。

8-5-4-1図 全対象者 再犯の有無別構成比(属性別)
8-5-4-1図 全対象者 再犯の有無別構成比(属性別)
Excel形式のファイルはこちら

全対象者の再犯の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に見ると,8-5-4-2図のとおりである。出所受刑者について,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点までの再犯可能期間を算出するに当たり,刑事施設における受刑期間を減じた日数の平均値(以下この節において「平均再犯可能期間」という。)を求めると,2年弱(687日)であった。全部執行猶予者は調査した再犯可能期間が4年であることも踏まえた上で,再犯の有無別構成比を見ると,出所受刑者の再犯ありの構成比は,2割弱であり,平均再犯可能期間が約半分であるにもかかわらず,単純執行猶予者(保護観察の付かない全部執行猶予の者をいう。以下この節において同じ。)と比べて高かった。また,保護観察付全部執行猶予者の再犯ありの構成比は,4割を超え,単純執行猶予者と比べて顕著に高かった。

8-5-4-2図 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別)
8-5-4-2図 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別)
Excel形式のファイルはこちら

全対象者の再犯の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,8-5-4-3図のとおりである。出所受刑者に関しては,再犯可能期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,再犯ありの構成比は,50~64歳の者が最も高く,次いで,65歳以上の者であり,これらの年齢層はいずれも約4人に1人が再犯に及んでいた。30歳未満の者の再犯ありの構成比は,1割程度であり,最も低かった。他方,全部執行猶予者の再犯ありの構成比は,30歳未満の者が2割弱で最も高く,次いで,40歳代の者,30歳代の者,65歳以上の者,50~64歳の者の順であった。

さらに,再犯ありの者について,詐欺の前科の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,出所受刑者は,再犯ありの総数の5割以上が詐欺の前科を有し,特に65歳以上の者(87.5%),50~64歳の者(74.1%),40~49歳の者(70.0%)の各年齢層に占める詐欺の前科を有する者の構成比は,いずれも7割以上であった。全部執行猶予者は,再犯ありの総数の1割弱が詐欺の前科を有し,特に65歳以上(50.0%)の年齢層に占める詐欺の前科を有する者の構成比は顕著に高かったが,その他の年齢層の構成比はいずれも1割に満たなかった。

8-5-4-3図 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別,年齢層別)
8-5-4-3図 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別,年齢層別)
Excel形式のファイルはこちら

全対象者の再犯の有無別構成比を,犯行の手口別に見るとともに,これを詐欺再犯・その他再犯(「詐欺再犯」は,再犯の判決罪名に詐欺を含むものをいい,「その他再犯」は,再犯の判決罪名が詐欺以外のものをいう。)別に見ると,8-5-4-4図のとおりである。出所受刑者に関しては,再犯可能期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,再犯ありの構成比は,無銭飲食等が5割を超えて顕著に高く,次いで,通帳等・携帯電話機の詐取(11.8%),特殊詐欺(10.2%)の順であり,保険金詐欺(3.8%)が最も低かった。詐欺再犯ありの構成比は,無銭飲食等が最も高く,次いで,特殊詐欺,通帳等・携帯電話機の詐取の順であった。ただし,犯行の手口別の再犯ありの構成比を見るに当たっては,犯行の手口によって,調査対象事件で実刑に処せられた者の構成比(無銭飲食等69.4%,特殊詐欺67.3%,保険金詐欺25.0%,通帳等・携帯電話機の詐取17.5%。犯行の手口別の刑の種類別構成比については,8-5-2-5表参照)や調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点においても受刑中の者の割合(特殊詐欺11.2%(30人),保険金詐欺8.6%(3人),無銭飲食等1.1%(1人),通帳等・携帯電話機の詐取(該当なし))に偏りがあるほか,犯行の手口別の平均再犯可能期間においても,特殊詐欺の931日から通帳等・携帯電話機の詐取の1,335日まで開きがあることに留意する必要がある。

8-5-4-4図 全対象者 再犯の有無別構成比(犯行の手口別)
8-5-4-4図 全対象者 再犯の有無別構成比(犯行の手口別)
Excel形式のファイルはこちら
(2)全部執行猶予者

全部執行猶予者について,その再犯期間(調査対象事件の第一審の判決言渡日から再犯の第一審の判決言渡日までの期間をいい,複数の再犯がある場合には最初の判決言渡日による。以下この節において同じ。)に係る累積再犯率(各項目の実人員に占める,再犯のあった者の累積人員の比率をいう。以下この節において同じ。)を,執行猶予の区分別に見ると,8-5-4-5図<1>のとおりである。保護観察付全部執行猶予者では,調査対象事件の第一審判決後13か月(27.7%)まで急激に上昇しているが,その後は上昇のペースがやや緩やかになり,36か月(40.4%)を超えると横ばいになっている。一方,単純執行猶予者では,最初から上昇のペースが緩やかであり,両者の累積再犯率の差は,調査対象事件の第一審判決言渡日から1年経過時点で20.0ptまで広がっている。更に詳しく見ると,保護観察付全部執行猶予者の再犯ありの人員のうち,半数以上の者は11か月が経過するまでの間に再犯がある一方,単純執行猶予者の再犯ありの人員のうち,半数以上の者は17か月が経過するまでの間に再犯がある。

8-5-4-5図<2>は,全部執行猶予者について,その再犯期間に係る累積再犯率を犯行の手口別に見たものである。無銭飲食等は,調査対象事件の第一審判決後2か月までは再犯に及んだ者がいなかったものの,その後,13か月(39.5%)まで急激に上昇している。特殊詐欺も,2か月までは再犯に及んだ者がいなかったものの,6か月から12か月(7.8%)まで上昇し続け,その後も緩やかに上昇している。通帳等・携帯電話機の詐取は,8か月(3.2%)までほぼ一定の割合で上昇し続け,その後は上昇のペースが緩やかになり,41か月(10.4%)を超えると横ばいになっている。保険金詐欺は,48か月経過時点での再犯ありの人員が4人と少数であり,42か月(3.9%)まで緩やかに上昇している。

8-5-4-5図 全部執行猶予者 累積再犯率(執行猶予の区分別,犯行の手口別)
8-5-4-5図 全部執行猶予者 累積再犯率(執行猶予の区分別,犯行の手口別)
Excel形式のファイルはこちら