少年院においても,各施設の実情に応じ,特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われている。特に,東京矯正管区管内の少年院について見ると,同矯正管区が作成した「特殊詐欺少年に対する鑑別・指導の手引」に基づき,各少年院の実情に応じて,工夫しながら指導計画を作成している。
指導計画の例(8-4-1-1表参照)を見ると,まず,個別に面接を実施し,指導担当者とのラポールを形成することから始めることで,動機付けを高めるとともに,次に行われるグループワークでの自己開示を行いやすくさせることにつなげている。グループワークでは,講義形式の集団指導にとどまらず,特殊詐欺再非行防止指導を受けている特殊詐欺在院者同士で考えを出し合うようにしており,これまで自分だけでは考えつかなかった新しい考えに触れさせている。特に,再非行防止のため,出院後に想定されるリスクをグループワークで討議する過程で,他の在院者の様々な考え方に触れることは,自らの在り方を考えることができるようになることにつながる。また,単元ごとに振り返り作文を作成させ,グループワークの中で考えたことや気付いたことを整理・理解させるようにしている。全ての単元終了後には,改めて個別面接を行い,指導の効果を把握するとともに,次回の指導グループに向けた改善点の検討等を行っている。
そのほか,全国の少年院では,各都道府県警察本部と連携した特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われており,令和元年10月1日現在の調査では,全国の少年院49庁(当時。分院を含む。)のうち20庁において,所在地の都道府県警察本部と連携した指導を行っている。例えば,多摩少年院においては,在院者に対し,東京都都民安全推進本部,警視庁,公益財団法人暴力団追放運動推進都民センター等が企画・実施している演劇(特殊詐欺に関わるきっかけや,特殊詐欺グループの背後にある暴力団組織等とのつながりや危険性を演劇という手段で表現したもの)を観覧させるなどの取組が行われている。