令和2年に詐欺により起訴された者のうち,有前科者(前に罰金以上の有罪の確定裁判を受けた者に限る。以下(1)において同じ。)の人員及び有前科者率(起訴人員に占める有前科者の人員の比率をいう。以下(1)において同じ。)は,5-2-2-1表のとおりである。
近時,詐欺により起訴された者の有前科者の人員は一貫して減少しているが,有前科者率は,30%台後半で推移している。
令和2年について見ると,詐欺により起訴された者の有前科者率(37.5%)は,起訴人員総数の有前科者率(44.0%)より低かった。一方,詐欺により起訴された者の有前科者のうち,懲役・禁錮の前科を有する者の比率は,起訴人員総数の有前科者と比較して高く,罰金のみの前科を有する者の比率は低かった(5-2-2-1表参照)。
また,令和2年に詐欺により起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中,一部執行猶予中,仮釈放中又は保釈中であった者の人員は,5-2-2-2表のとおりである。
近時,詐欺により起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中であった者及び仮釈放中であった者はいずれもおおむね減少傾向にあり,令和2年は,前者は460人(前年比4人減),後者は38人(同3人増)であった。また,犯行時に保釈中であった者は,10人前後で推移しており,2年は12人(同1人増)であった。
8-3-2-4表は,詐欺により全部執行猶予を言い渡された者について,保護観察の有無別の人員及び取消事由別の取消人員等の推移(最近10年間)を見たものである。全部執行猶予を取り消された者は,平成23年以降減少傾向にあり,令和2年は155人(全部執行猶予取消人員総数の4.5%)であった。このうち,取消事由が再犯である者は,保護観察付全部執行猶予中の者が20人(前年比4人増),その他の者(単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。)が119人(同5人減)であった。
詐欺により全部執行猶予を言い渡された者について,取消人員の言渡人員に対する比率(以下(2)において「執行猶予取消率」という。なお,取消人員は,当該年に全部執行猶予を取り消された者であり,当該年よりも前に全部執行猶予の言渡しを受けた者も含まれる。このため,厳密には取消人員の言渡人員に対する比率は,実際の全部執行猶予の取消しの比率を意味しないが,そのおおよその傾向を見ることができる。)は,全罪名の執行猶予取消率(5-2-2-3表参照)よりも平成23年以降一貫して低く,29年まで低下傾向にあったが,30年にやや上昇した後は10%前後で推移している。再犯を事由とする執行猶予取消率を保護観察の有無別に見ると,保護観察付全部執行猶予中の者は26.0%と全罪名の執行猶予取消率(23.6%)より高く,その他の者は8.8%と全罪名の執行猶予取消率(10.0%)より低かった。
刑の一部執行猶予制度が開始された平成28年から令和2年までの間に詐欺により一部執行猶予を言い渡された者は4人(全て保護観察に付されている。)であり,うち同年までに同猶予を取り消された者はいなかった(検察統計年報による。)。