前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和3年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/コラム4

コラム4 世界保護司会議と京都保護司宣言

令和3年(2021年)3月7日,国立京都国際会館において,京都コングレスのアンシラリーミーティングとして,「世界保護司会議」が開催され,その成果文書として,「京都保護司宣言」が採択された。

犯罪者や非行少年の再犯防止・改善更生を図るためには,地域ボランティアの協力が極めて重要である。多くの国々には,犯罪者等の社会復帰のための官民連携プログラムがあり,幾つかの国々では,保護司を始めとする地域ボランティアが犯罪者等の社会復帰を支えている。その中でも,日本の保護司制度は,アジアやアフリカの地域ボランティア制度の発展にも多大な影響を与えてきた。これまでもアジアを中心とする各国の保護司等が一堂に会する国際会議として,平成26年(2014年)と平成29年(2017年)にアジア保護司会議が開催され,各国の保護司や更生保護に関する制度の現状や課題等について意見交換がなされ,保護司の国際的なネットワークを更に広めていくことを内容とする「東京宣言」が採択された経緯がある。

世界保護司会議は,これら2回にわたるアジア保護司会議を土台として実現したものであり,世界各国の実務家等の参加を得て,保護司を始めとする地域ボランティアが再犯防止の取組に参画することの有用性や,これらの制度を広く世界に普及していくための方策等について議論することを目的として開催されたものである。

世界保護司会議では,我が国の法務大臣による歓迎挨拶,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)(第1編第3章第1節参照)事務局長による開会挨拶,更生保護法人全国保護司連盟理事長からのビデオメッセージ,タイ法務研究所次長によるゲストスピーチ,国際矯正司法心理学協会前会長による基調講演に続いて,法務省保護局長から,京都保護司宣言の趣旨説明がなされた。さらに,「罪を犯した人の立ち直りを支える地域ボランティアの有用性」をテーマにパネルディスカッションが行われ,タイ,フィリピン,日本,ケニア,カナダ及び英国(欧州保護観察連合)のパネリストから,それぞれの国や地域における地域ボランティアの役割や実際の活動について発表が行われた。我が国からは,栃木県保護司会連合会会長が参加し,自らの保護司としての経験を踏まえ,保護司活動の基盤となる地域からの理解や協力を得ることの重要性等について発表が行われた。これに続き,「京都保護司宣言」が採択され,UNODC司法課長による挨拶をもって閉会した。

「京都保護司宣言」は,刑事司法や犯罪者処遇の在り方,犯罪者の社会復帰を支える地域ボランティアの制度的発展のあるべき方向性を見据え,今後,国際社会や国連に対し,その協力とイニシアチブの発揮を求めていくべき事項,例えば,「再犯防止のために地域ボランティアを活用する国連準則(モデル戦略)」を策定すること,「罪を犯した人の立ち直りを支える地域ボランティア国際デー」(世界保護司デー)を設立することなどを提案している。我が国としては,京都保護司宣言の趣旨を踏まえ,「HOGOSHI」の輪を世界に広げ,犯罪者の社会復帰と再犯防止を推進し,誰一人取り残さない包摂的な社会を実現することに取り組んでいくこととしている。

世界保護司会議の様子【写真提供:法務省保護局】
世界保護司会議の様子
【写真提供:法務省保護局】
QRコード:京都保護司宣言(和文)
【京都保護司宣言(和文)】