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令和3年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/コラム5

コラム5 京都コングレス・ユースフォーラム

ユースフォーラムは,世界のユース(若者)がコングレスの議題に関連したテーマについて議論を行うものであり,第13回コングレスで初めて開催された。京都コングレスでも,令和3年(2021年)2月27日及び同月28日の2日間,京都コングレス・ユースフォーラム(以下本コラムにおいて「ユースフォーラム」という。)が開催された。

ユースフォーラムは,京都コングレスと同様に,新型コロナウイルス感染症対策を講じた上で,会場参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド方式で開催され,国内外の学生等約150人が参加した。ユースフォーラムでは,「安全・安心な社会の実現へ~SDGsの達成に向けた私たちの取組~」が全体テーマとされ,参加者は,「青少年犯罪の予防・罪を犯した青少年の社会復帰における若者の役割」,「法遵守の文化を醸成するための若者の教育」,「安全なネット社会に向けた若者の責任」の三つの個別テーマについて議論し,その結果は,京都コングレスに向けた「勧告」として採択された。本コラムでは,同勧告の主な内容を紹介する。

1 青少年犯罪の予防・罪を犯した青少年の社会復帰における若者の役割
(1)社会の中のアクターたち

政府は,青少年の犯罪予防・社会復帰を実践・発展させるため,地方公共団体,家族,地域コミュニティを始めとする様々な関係者・関係機関のパートナーシップの強化を図るべきである。

(2)更生保護を促進させる施策

政府は,矯正施設及びその他の施設,社会・コミュニティにおける処遇に際し,更生保護を促進する方策を実施するよう最大限努力すべきである。

(3)社会的蔑視・偏見の防止・除去

政府は,「誰一人取り残さない」という基本理念の下,法に抵触した青少年についても公平に扱い,彼らのプライバシーを保護し,健康・教育・人格の発達・家族や同世代の者たちとのつながりづくりの支援など特段のニーズを捉えることや,青少年の社会復帰について強いメッセージを発信すべきである。

(4)罪を犯した青少年の社会復帰のための意識啓発

コミュニティは,法に抵触した青少年を,偏見や差別等なく受け入れることが重要である点を理解すべきである。

(5)新型コロナウイルスへの対処

政府は,ロックダウンや外部組織からアクセス制限がなされているなどの事情のため,身体的ないし心理的な支援や家族との連絡,法的救済といった基本的なニーズにアクセスできない若者たちへの支援の必要性を特に考慮に入れるべきである。

(6)犯罪・再犯防止プログラム

国連薬物・犯罪事務所(UNODC)(第1編第3章第1節参照),政府間機関(IGO),教育機関等は,犯罪・再犯防止の効果的な方策について精査すべきである。

2 法遵守の文化を醸成するための若者の教育
(1)法の支配に関する教育の強化

全ての教育システムにおいて,法の支配についての学びを涵養するようなカリキュラムが編成されるべきである。

(2)法へのアクセス可能性

法律用語は複雑で,しばしば理解が困難であることを認識し,全ての人のために法律をより身近な言葉に言い換えるべきである。

(3)マスメディアとソーシャルメディア

マスメディアとソーシャルメディアに対する規制は,特定の基準を設けることや,各メ ディアが配信内容に対して,説明責任を負うことにより,実施されるべきである。

(4)市民の信頼,強固な制度,説明責任

政府は,透明性と説明責任を社会の基盤とし,その意思決定プロセスの中立性と少数者に対する機会の均等性を保障すべきである。

(5)差別及び社会的連結

青少年の犯罪への関与の根本的な原因とそれを誘発する環境に対処するための青少年に向けた公共政策と社会的介入策を検討すべきである。

(6)社会復帰プログラム

過去に犯罪・違法行為を犯した人が,自分の経験談や犯罪行為をやめた理由,どのように適正に社会復帰できたかを語る場を提供すべきである。

3 安全なネット社会に向けた若者の責任
(1)防止措置

インターネット上のコンテンツや行為による被害に対処するための規制手段及び革新的なツールを更に開発する必要性を強調する。

(2)被害者の保護を含む法的対応と国内的措置

政府は,ネットを経由した児童の性的被害や画像を用いた虐待,テロを目的とするオンライン求人,なりすまし行為,子供を狙ったサイバー犯罪,ヘイトクライム,オンライン賭博等の情報通信技術(以下本コラムにおいて「ICT」という。)を用いた犯罪の効果的な予防,捜査及び訴追のための法規制を整備するなど,あらゆる措置を講ずるべきである。

(3)法執行機関

人工知能(AI)が法を実現する強力なツールとなる可能性があることを強調しつつも,悪意ある目的で使用することによる負の影響についても留意すべきである。

(4)国際協力

ICTを使用した犯罪は国境を越える性質を有するため,そのような犯罪と戦うための国際協力を促進し,現在及び将来の国際的な合意に基づき犯罪者を適切に処罰する合理的な措置と施策を支持する。

(5)官民連携

政府に対し,ICTの犯罪への悪用がもたらす課題に対処するため,官民が一層連携することを求める。

(6)能力構築

各国及び民間のステークホルダーに対し,ICTの利用によって拡大する犯罪を防止・撲滅するための国や地域による努力を支援する能力を構築するため,継続的かつ持続可能な資金援助を行うよう求める。

ユースフォーラムでの議論の様子【写真提供:法務省大臣官房国際課】
ユースフォーラムでの議論の様子
【写真提供:法務省大臣官房国際課】