京都コングレスでは,成果文書として「持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の支配の推進に関する京都宣言」(「京都宣言」)という政治宣言が全会一致で採択された。同宣言は,国際社会が犯罪防止・刑事司法の分野において取り組むべき内容を取りまとめたものであり,総論部分と,京都コングレスの四つの議題に沿って構成された各論部分から成る。
総論部分は,京都宣言全体に通じるメッセージを示すものであり,国際協調の重要性や基本的人権の擁護といった従来の政治宣言でも確認されてきたことが記載されているほか,京都宣言に特徴的な内容として,法の支配と持続可能な発展の相互補強性,犯罪防止のためのマルチステークホルダー・パートナーシップの推進,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が刑事司法に及ぼす影響への懸念とそれへの対応に関する国際社会のコミットメント等が記載されている。各論部分は,具体的な行動目標を示しており,第1章の「犯罪防止の推進」では,「根本原因を含む犯罪の原因への対処」,「エビデンス(科学的な根拠)に基づく犯罪防止」,「犯罪の経済的側面への対処」,「地域の状況を踏まえたテーラーメードの犯罪防止戦略」,「犯罪防止におけるジェンダーの視点の主流化」,「犯罪防止における子供と若者」及び「犯罪防止のための若者のエンパワーメント(能力強化)」に関する行動が,第2章「刑事司法制度の推進」では,「被害者の権利の保護と証人及び通報者の保護」,「刑務所の状況の改善」,「更生と社会復帰を通じた再犯防止」,「刑事司法制度におけるジェンダーの視点の主流化」,「刑事司法制度と接点を持った子供及び若者の脆弱性への対処」及び「犯罪捜査手続の向上」に関する行動が,第3章「法の支配の推進」では,「司法アクセスと法の下での平等な取扱い」,「法律扶助へのアクセス」,「国内の量刑政策」,「効果的で,説明責任があり,公平で,包摂的な機関」,「効果的な腐敗防止の取組」及び「社会的,教育的その他の方策」に関する行動が,第4章「あらゆる形態の犯罪を防止し,それに対処するための国際協力と技術支援の推進」では,「能力構築と技術支援を含む国際協力」,「犯罪者から犯罪収益を剥奪するための国際協力」,「あらゆる形態のテロ」及び「新規,新興及び進化形態の犯罪」に関する行動がそれぞれ記載されている。
今後,国際社会が京都宣言の内容を実施していくことが重要であり,我が国は,同宣言の着実な実施に向け,リーダーシップを発揮していくことが期待されている。
日本政府は,京都コングレスの全体テーマ,四つの議題及び各議題に対応したワークショップトピックに沿って,我が国の犯罪防止・刑事司法分野の取組等を紹介するとともに,国際社会に対する提言と我が国のコミットメントを発信するものとして,政府公式のステートメントであるナショナルステートメントを作成し,京都コングレスに提出した。
京都コングレスでは,我が国の法務大臣が議長に選任され,開会式及び閉会式において,それぞれオープニングステートメント及びクロージングステートメントを行った。開会式の途中で実施されたセレモニアルセグメントでは,高円宮妃殿下,内閣総理大臣及び検事総長がステートメントを行い,ハイレベルセグメントでは,法務事務次官が,京都宣言について,「マルチステークホルダー・パートナーシップ」,「国際協力の推進」及び「若者のエンパワーメント」の視点を強調する旨の日本代表団長ステートメントを行った。引き続いて行われた全体会合の各議題では,「社会的・経済的発展に向けた包括的な犯罪防止戦略」において警察庁長官官房審議官が,「刑事司法システムが直面する課題に対する統合的なアプローチ」及び「法の支配の促進に向けた各国政府による多面的なアプローチ」において法務省大臣官房審議官が,「あらゆる形態の犯罪を防止し対処するための国際協力及び技術支援」において法務省法務総合研究所長が,それぞれステートメントを行った。