更生保護施設は,主に保護観察所から委託を受けて,住居がなかったり,頼るべき人がいないなどの理由で直ちに自立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を宿泊させ,食事を給与するほか,就職援助,生活指導等を行ってその円滑な社会復帰を支援している施設である。
令和3年4月1日現在,全国に103施設があり,更生保護法人により100施設が運営されているほか,社会福祉法人,特定非営利活動法人及び一般社団法人により,それぞれ1施設が運営されている。その内訳は,男性の施設88,女性の施設7及び男女施設8である。収容定員の総計は,2,402人であり,男性が成人1,900人と少年311人,女性が成人140人と少年51人である(法務省保護局の資料による。)。
令和2年における更生保護施設への委託実人員は,7,539人(うち新たに委託を開始した人員5,806人)であった(保護統計年報による。)。更生保護施設へ新たに委託を開始した人員の推移(最近20年間)は,2-5-6-3図のとおりである。
令和元年度における更生保護施設退所者(応急の救護等及び更生緊急保護並びに家庭裁判所からの補導委託のほか,任意保護(更生緊急保護の期間を過ぎた者に対する保護等,国からの委託によらず,被保護者の申出に基づき,更生保護事業を営む者が任意で保護すること)による者を含む。)の更生保護施設における在所期間は,3月未満の者が50.9%,3月以上6月未満の者が37.2%,6月以上1年未満の者が11.2%,1年以上の者が0.7%であり,平均在所日数は79.7日であった。退所先については,借家(32.6%),就業先(18.3%)の順であった。退所時の職業については,労務作業(46.1%),サービス業(8.3%)の順であり,無職は35.0%であった(法務省保護局の資料による。)。
更生保護施設では,生活技能訓練(SST),酒害・薬害教育等を取り入れるなど,処遇の強化に努めており,令和2年度においては,SSTが31施設,酒害・薬害教育が44施設で実施されている(法務省保護局の資料による。)。
また,適当な帰住先がなく,かつ,高齢又は障害により福祉サービス等を受けることが必要であるが,出所後直ちに福祉による支援を受けることが困難な者について,一旦更生保護施設において受け入れ,退所後円滑に福祉サービスを受けるための調整及び社会生活に適応するための指導や助言を内容とする特別処遇が行われており,その役割を担うための施設(指定更生保護施設)が指定されている。令和2年度に特別処遇の対象となったのは,1,812人(前年比73人(3.9%)減)であり,3年4月1日現在,全国で74施設が指定更生保護施設に指定されている(法務省保護局の資料による。)。
平成25年度からは,薬物処遇に関する専門職員を配置して,薬物依存がある保護観察対象者等への依存からの回復に重点を置いた処遇を実施する更生保護施設(薬物処遇重点実施更生保護施設)が指定されており,令和3年4月1日現在,全国で25施設が指定されている(法務省保護局の資料による。)。
さらに,平成29年度からは,更生保護施設を退所するなどして地域に生活基盤を移した保護観察対象者及び更生緊急保護対象者に対し,更生保護施設に通所させて,自立更生に向けた生活上の諸課題を解決するための生活相談に乗り,必要な指導や助言を行ったり,継続的に薬物処遇を受けさせたりするフォローアップ事業を更生保護施設に委託する取組が開始されている。令和2年度にフォローアップ事業の対象となった人員は208人であり,その内容は,生活相談支援が182人,薬物依存からの回復プログラムが19人,薬物依存回復訓練が7人であった(法務省保護局の資料による。)。
このほか,令和元年度から,従前の運用では仮釈放期間が比較的短期間である薬物依存のある受刑者について,早期に仮釈放し,一定の期間,更生保護施設等に居住させた上で,地域における支援を自発的に受け続けるための習慣を身に付けられるよう,地域の社会資源と連携した濃密な保護観察処遇を実施する薬物中間処遇が試行されている。同試行は,3年4月1日現在,3施設において実施されている(法務省保護局の資料による。)。