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令和2年版 犯罪白書 第4編/第5章/第3節/1

1 ストーカー犯罪

ストーカー規制法は,ストーカー行為(同一の者に対し,恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,恋愛感情等の対象者又はその配偶者等に対し,同法に規定された「つきまとい等」の行為を反復してすること)を処罰するなどストーカー行為等について必要な規制を行うとともに,その相手方に対する援助の措置等を定める目的で制定された。

警察署長等は,申出を受けた場合に,つきまとい等をして相手方に不安を覚えさせる行為があり,かつ,更に反復のおそれがあると認めるときには,当該行為をした者に対し,更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。また,平成28年12月のストーカー規制法改正(平成28年法律第102号)により,急に加害者の行為が激化して重大事件に発展するおそれがあるなどのストーカー事案の特徴を踏まえて,都道府県公安委員会は,警告の存在を要件とせずに禁止命令等をすることなどが可能となった(警告前置の廃止及び緊急禁止命令等。29年6月施行)。同改正では,住居等の付近をみだりにうろつく行為,拒まれたにもかかわらず,連続してSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセージ機能を利用してメッセージを送信する行為,ブログ等の個人ページにコメント等を書き込む行為等が「つきまとい等」に追加されるとともに,ストーカー行為罪の非親告罪化,ストーカー行為罪等についての法定刑の引上げがなされた(同年1月施行)。

ストーカー規制法による警告等の件数の推移(最近20年間)は,4-5-3-1図のとおりである。警告の件数は,平成26年以降は3,000件を超えていたが,29年から減少し,令和元年は2,052件(前年比16.3%減)であった。禁止命令等の件数は,平成29年から急増し,令和元年は1,375件(同18.8%増。うち緊急禁止命令等は601件)であった(警察庁生活安全局の資料による。)。

4-5-3-1図 ストーカー規制法による警告等の件数の推移
4-5-3-1図 ストーカー規制法による警告等の件数の推移
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ストーカー規制法違反として,ストーカー行為又は禁止命令等違反行為が処罰対象であるほか,ストーカー行為をしている者による行為が殺人,傷害等の刑法その他の法律上の犯罪に該当する場合は,それらによっても処罰されることになる。ストーカー事案の検挙件数の推移(資料を入手し得た平成16年以降)を罪名別に見ると,4-5-3-2図のとおりである。

ストーカー規制法違反は,平成24年から著しく増加していたが,30年から2年連続で減少し,令和元年は864件(前年比0.7%減)となったものの,増加直前の平成23年と比べると約4.2倍であった。また,他法令による検挙件数の総数も,24年以降,1,500件を超えて推移していたが,29年から3年連続で減少し,令和元年は1,491件(同6.5%減)となったものの,同様に平成23年の約1.9倍であった。

4-5-3-2図 ストーカー事案の検挙件数の推移(罪名別)
4-5-3-2図 ストーカー事案の検挙件数の推移(罪名別)
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なお,令和元年におけるストーカー事案に関する相談等件数(ストーカー規制法その他の刑罰法令に抵触しないものも含む。)は,2万912件であり,被害者と加害者の関係別に見ると,交際相手(元交際相手を含む。)が8,907件(42.6%)と最も多く,次いで,知人・友人2,600件(12.4%),勤務先同僚・職場関係2,551件(12.2%),関係(行為者)不明1,807件(8.6%),配偶者(内縁・元配偶者を含む。)1,539件(7.4%),面識なし1,505件(7.2%)の順であった(警察庁生活安全局の資料による。)。