平成期前半における犯罪情勢の悪化を受け,平成15年9月,内閣総理大臣が主宰し,全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議において,治安回復のための三つの視点として,「国民が自らの安全を確保するための活動の支援」,「犯罪の生じにくい社会環境の整備」及び「水際対策を始めとした各種犯罪対策」の重要性が確認された。そして,同年12月の犯罪対策閣僚会議において,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画-「世界一安全な国,日本」の復活を目指して-」が策定された。同行動計画では,「平穏な暮らしを脅かす身近な犯罪の抑止」,「社会全体で取り組む少年犯罪の抑止」,「国境を越える脅威への対応」,「組織犯罪等からの経済,社会の防護」,「治安回復のための基盤整備」が重点課題とされた(第2編第1章第1節2項(3)コラム3参照)。
それ以前からも,警察庁を中心として,街頭犯罪対策(犯罪多発地域・時間帯における警戒活動・取締活動の強化,警察官の増員,防犯ボランティア団体の支援等),侵入犯罪対策(防犯性能の高い建物部品の普及促進,特殊開錠用具所持禁止法の制定等),車両関連の窃盗事犯対策(自転車防犯登録の義務化,イモビライザー等の盗難防止装置の普及促進等),自動販売機ねらい対策(堅牢化自動販売機の普及,新硬貨・紙幣の発行等),万引き対策(警察への届出の徹底,捜査書類等の合理化,啓発活動等)等が実施されており,これらの施策は平成25年12月閣議決定の「「世界一安全な日本」創造戦略」にも引き継がれた。
実際,窃盗の手口別に見ると,平成15年以降,万引きを除き,多くの手口で認知件数が減少に転じており,特に,街頭窃盗(車上・部品ねらい,自動販売機ねらい,自動車盗,オートバイ盗,自転車盗及びひったくり)は大きく減少している(第2編第1章第1節2項(1)及びコラム2参照)。