前の項目 次の項目        目次 図表目次 年版選択

令和元年版 犯罪白書 第6編/第2章/第3節
第3節 人身取引被害者保護

人身取引は重大な人権侵害であり,人道的観点からも迅速・的確な対応が求められるところ,その防止・撲滅,被害者の保護を含む総合的・包括的な人身取引対策を早急に講ずることを目的として,平成16年12月,犯罪対策閣僚会議により人身取引対策行動計画が策定され,これを受け,平成17年法律第66号による刑法の改正(17年7月施行。第1編第1章第1節7項参照)により人身売買等の罪が創設された。21年12月には人身取引対策行動計画2009,26年12月には人身取引対策行動計画2014が策定された。これらの計画により,人身取引の防止・撲滅等の施策に加え,人身取引被害者の保護・支援に係る施策が講じられている。

発見された女性の人身取引被害者については,必要に応じ,婦人相談所等が一時保護を行い,又は民間シェルター等に一時保護を委託するなどして,その保護を行っており,平成29年度においては,婦人相談所等が一時保護を行った被害者数は14人(17年度以降の累計で412人),婦人相談所が民間シェルター等に一時保護を委託するなどした被害者数は3人(同年度以降の累計で47人)であった(厚生労働省子ども家庭局の資料による。)。また,外国人の人身取引被害者については,被害者が不法残留等の入管法違反の状態にあっても,在留特別許可による法的地位の安定化を図っており,30年には,入管法違反の状態にあった5人(17年以降の累計で181人)の人身取引被害者全員に在留特別許可がなされた(出入国在留管理庁の資料による。)。

このほか,国際移住機関(IOM)は,警察,出入国在留管理庁,婦人相談所等と連携し,人身取引被害者に対する帰国支援等の事業を行っており,平成30年には2か国8人(同事業が開始された17年5月以降の累計で9か国322人)に対する帰国・社会復帰支援が行われた(国際移住機関の資料による。)。