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令和元年版 犯罪白書 第5編/第2章/第4節/2
2 保護観察対象者の再処分等の状況

平成元年から30年(取消・再処分率については,資料を入手し得た9年から30年)までの各年に保護観察が終了した仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,<1>再処分率(保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の占める比率をいう。),<2>取消率(再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部・一部執行猶予が取り消された者の占める比率をいう。)及び<3>取消・再処分率(取消又は再処分のいずれかに該当する者(双方に該当する場合は,1人として計上される。)の占める比率をいう。)の推移を見ると,5-2-4-2図のとおりである。

取消率は,仮釈放者では,平成元年が7.3%で,12年まで上昇・低下を繰り返した後,同年をピークに低下傾向となり,19年に5%を割り,その後,若干の変動はあるものの,ほぼ横ばいで推移している。保護観察付全部・一部執行猶予者では,元年が26.7%で,4年から14年まで上昇傾向にあったが,その後は低下傾向にある。なお,仮釈放者の再処分率が極めて低いのは,仮釈放者が再犯に及んで刑事裁判を受けることになった場合であっても,仮釈放期間中には刑事裁判が確定しないことが多いことなどが関係していると考えられる。

平成30年に仮釈放を取り消された一部執行猶予者は前年の3人から21人に増加した(CD-ROM参照)。

5-2-4-2図 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移
5-2-4-2図 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移
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資料を入手し得た平成10年から30年の各年の保護観察終了者のうち,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の取消・再処分率の推移を,男女別・年齢層別・罪名別に見ると,5-2-4-3図のとおりである。

仮釈放者を男女別に見ると,女性は,平成10年(5.0%)から16年(6.5%)にかけて上昇傾向にあったが,同年をピークに緩やかな低下傾向にあり,30年は10年より1.0pt低い4.0%であった。男性は,女性と比べ低下傾向が大きく,30年は10年(7.8%)より3.2pt低い4.5%であった。年齢層別に見ると,20年までは65歳以上の年齢層がそれ以外の年齢層よりおおむね低く,50~64歳の年齢層がおおむね高い傾向が見受けられるが,16年はその差が3.3ptであるのと比べ,30年は1.1ptとなっており,21年以降は年齢層による差が余りなくなってきている。また,罪名別に,窃盗,覚せい剤取締法違反,その他の罪名で比較してみると,10年は窃盗が12.9%,覚せい剤取締法違反が6.5%,その他の罪名が4.3%であったのに対し,30年は窃盗が6.8%,覚せい剤取締法違反が4.1%,その他の罪名が2.8%で,窃盗及び覚せい剤取締法違反はいずれも取消・再処分率がその他の罪名より一貫して高いものの,10年と比べると,窃盗は6.1pt,覚せい剤取締法違反は2.4pt,それぞれ低下している。

保護観察付全部・一部執行猶予者では,男女別に見ると,平成10年は男性が39.1%,女性が29.6%であったところ,30年は男性28.8%,女性27.0%と,男女の差が小さくなっている(なお,保護観察付一部執行猶予者のみについて見ると,30年は男性が保護観察終了人員69人中,取消又は再処分のいずれかに該当する者53人,女性が同様に6人中6人であった。)。年齢層別に見ると,29歳以下の層の取消・再処分率が一貫して高く,10年は47.0%,30年は37.3%であった。罪名別に見ると,窃盗,覚せい剤取締法違反がその他の罪名と比べ一貫して高く,30年では覚せい剤取締法違反は17.7pt,窃盗は13.5pt高かった。

5-2-4-3図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,罪名別)
5-2-4-3図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,罪名別)
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資料を入手し得た平成10年から30年までの各年に保護観察が終了した仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察終了時の就労状況別に取消・再処分率を見ると,5-2-4-4図のとおりである。仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者共に,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い。ただし,保護観察付全部・一部執行猶予者について見ると,保護観察終了時に無職であった者の取消・再処分率は,ピークであった10年と比べ30年は著しく低下している。

5-2-4-4図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(終了時の就労状況別)
5-2-4-4図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(終了時の就労状況別)
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5-2-4-5図は,平成元年及び25年の各年の保護観察開始人員に占める,保護観察が開始された日から5年以内に,再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予を取り消された者の年次別の累積人員の比率を見たものである。

仮釈放者を見ると,平成元年及び25年の各年の保護観察開始人員に占める,保護観察が開始された年に再犯又は遵守事項違反により仮釈放を取り消された者の人員の比率は,元年が4.0%,25年が2.9%,保護観察が開始された年から2年目まで(元年は2年の年末まで,25年は26年の年末まで)に再犯又は遵守事項違反により仮釈放を取り消された者の累積人員の比率は,元年が6.4%,25年が4.3%となっている。

また,保護観察付全部執行猶予者を見ると,平成元年の保護観察開始人員に占める,再犯又は遵守事項違反により保護観察付全部執行猶予を取り消された者の累積人員の比率は,保護観察が開始された年から3年目まで(平成3年の年末まで)が21.7%,6年目まで(平成6年の年末まで。ただし,保護観察が開始された日から5年以内)が27.3%である一方,25年の保護観察開始人員に占める,再犯又は遵守事項違反により保護観察付全部執行猶予を取り消された者の累積人員の比率は,3年目まで(27年の年末まで)が19.8%,6年目まで(30年の年末まで。ただし,保護観察が開始された日から5年以内)が25.5%となっており,仮釈放者,保護観察付全部執行猶予者共に,保護観察開始人員に占める,再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予が取り消された者の累積人員の比率は,元年と比べて25年の方が,保護観察が開始された年から6年目まで(保護観察が開始された日から5年以内)のいずれの年においても低くなっている(CD-ROM参照)。

5-2-4-5図 仮釈放・保護観察付全部執行猶予の取消状況
5-2-4-5図 仮釈放・保護観察付全部執行猶予の取消状況
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5-2-4-6図は,各年の保護観察開始人員に占める,保護観察が開始された日から5年以内に,再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予を取り消された者の累積人員の比率の推移(平成元年以降)を見たものである。

仮釈放者を見ると,平成元年から16年まで6~7%で推移していたが,17年に6%を割り,その後低下傾向となり,19年から4%台で推移している。保護観察付全部執行猶予者を見ると,7年から16年まで連続して30%を超えていたが,その後低下して,25年に保護観察を開始した者は,最も高かった12年に保護観察を開始した者の33.2%と比べ7.7pt低かった(CD-ROM参照)。

5-2-4-6図 仮釈放・保護観察付全部執行猶予の取消状況の推移
5-2-4-6図 仮釈放・保護観察付全部執行猶予の取消状況の推移
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