裁判所の入院決定を受けた者は,指定入院医療機関(厚生労働大臣が指定する。)に入院して,この制度に基づく専門的で手厚い医療を受けることになる。指定入院医療機関は,制度施行当初である平成17年度は全国で5機関であったところ,31年4月1日現在,33機関となっており,開始当初から増加している(厚生労働省社会・援護局の資料による。)。
保護観察所は,指定入院医療機関に入院した対象者の円滑な社会復帰を図るため,入院当初から,退院に向けた生活環境の調整を行っている。調整の過程では,保護観察所の社会復帰調整官が,対象者が入院している指定入院医療機関を訪問し,対象者から退院後の生活に関する希望を聴取し,指定入院医療機関のスタッフ等と協議を行うなどして調整計画を作成し,これに基づき,居住予定地の指定通院医療機関や都道府県・市町村等の精神保健福祉関係機関と連携し,退院先となる住居等を調整するほか,退院後に必要となる医療や精神保健福祉サービス等の援助を円滑に受けられるよう調整を行っている。
生活環境の調整の開始件数・終結件数の推移(平成17年以降)は,4-10-3-3表のとおりである。30年末現在の生活環境の調整の係属件数は738件であった。
指定入院医療機関の管理者は,対象者について,入院を継続させて医療を行う必要があると認める場合は,6月ごとに,入院継続の確認の申立てをしなければならず,他方,入院を継続させて医療を行う必要があると認めることができなくなった場合は,直ちに退院の許可の申立てをしなければならない。また,対象者又はその保護者若しくは弁護士である付添人は,いつでも,退院の許可又は医療の終了の申立てをすることができる。これらの申立てを受けて,裁判所は,医療継続の要否等を審判により決定する。平成30年には,指定入院医療機関の管理者による退院許可の申立ては248件,対象者等による退院許可・医療終了の申立ては85件が受理され,また,退院許可決定(退院を許可するとともに入院によらない医療を受けさせる旨の決定をいう。以下この節において同じ。)は243件,医療終了決定は28件なされている(司法統計年報による。)。