鑑別(非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上,その事情の改善に寄与するため,その者の処遇に資する適切な指針を示すことをいう。)は,家庭裁判所の求めに応じて行う審判鑑別,家庭裁判所以外の関係機関の求めに応じて行う処遇鑑別に大別される。少年鑑別所法施行前においては,家庭裁判所で観護措置(少年鑑別所送致)の決定がなされた少年に対して行う収容鑑別のほか,家庭裁判所からの請求による在宅鑑別,法務省関係機関からの依頼鑑別,一般少年鑑別等に大別されていた。それらの運用については,従前から標準化が図られてきたが,法制定により概念や位置付けが整理された。
審判鑑別のうち,観護措置の決定により少年鑑別所に収容されている者に対して行う鑑別を収容審判鑑別という。収容審判鑑別の標準的な流れは,3-2-3-5図のとおりである。少年鑑別所では,鑑別面接,心理検査,行動観察,医学的検査及び診察の結果に,外部から得られた情報を加えて検討し,在宅保護(保護観察等),収容保護(少年院送致等)等の処遇に係る判定を行う。判定の結果は,鑑別対象者の資質の特徴,非行要因,改善更生のための処遇指針等と共に鑑別結果通知書に記載されて家庭裁判所に送付され,審判の資料となる。審判の結果,保護観察や少年院送致の決定がなされた場合には,それぞれ,保護観察を行う保護観察所及び送致先の少年院に送付され,処遇の参考に供される。また,法務省矯正局では,「再犯防止に向けた総合対策」(第5編第1章参照)の一環として,少年の再非行防止に資するための調査ツールである法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)を開発し,少年鑑別所において運用している(MJCAは,心理学,犯罪学等の人間科学の知見を踏まえて,少年鑑別所における実証データに基づき,統計学的な分析を経て開発したもので,対象者の再非行の可能性等を把握するとともに,保護者との関係性の調整や社会適応力の向上等,何を目標とした働き掛けを行えば再非行を防止できるのかを明らかにしようとするものである。)。
3-2-3-6表は,平成元年・15年・30年に収容審判鑑別を終了した者について,鑑別の判定と審判における決定等との関係を見たものである。保護観察を主とする在宅保護相当と鑑別判定された者のうち,審判決定により保護観察が付された者の割合は,元年では69.5%,15年では83.7%,30年では77.3%であった。少年院送致相当と判定された者のうち,審判決定により少年院に送致された者の割合は,元年では53.9%,15年では55.8%,30年では56.9%であった。
審判鑑別のうち,少年鑑別所に収容されていない者に対して,少年鑑別所に来所させて行う鑑別等,収容審判鑑別以外のものを在宅審判鑑別という。平成元年における在宅審判鑑別の受付人員は2,142人,15年は809人,30年は384人であった(矯正統計年報による。)。ただし,年ごとの人員を比較する際には,少年鑑別所法施行により鑑別の区分に変更がある点に留意する必要がある。
地方更生保護委員会,保護観察所の長,児童自立支援施設の長,児童養護施設の長,少年院の長又は刑事施設の長の求めによる鑑別を処遇鑑別という。処遇鑑別では,処遇の経過,課題及びその分析,今後の処遇指針等について鑑別結果通知書を作成し,各機関における対象者の処遇に資することとしている。平成元年における受付人員は8,665人,15年は1万787人,30年は5,409人であり,30年の内訳は,地方更生保護委員会又は保護観察所が3,259人,少年院又は刑事施設が2,132人,児童自立支援施設又は児童養護施設が18人であった(矯正統計年報による。)。ただし,年ごとの人員を比較する際には,少年鑑別所法施行により鑑別の区分に変更がある点に留意する必要がある。