7-4-2-3図は,犯行場所別構成比(犯行場所が不詳の者を除く。)を見たものである。高齢群は,非高齢群と比べて屋内が約8割と高い。また,高齢群は,加害者方(被害者同居あり)及び加害者方(被害者同居なし)が非高齢群と比べて高く,被害者方(加害者同居なし)が低い。
7-4-2-4図は,凶器の使用の有無が不詳の者を除いて,凶器の使用の有無及び凶器の種類を見たものである。高齢群は,非高齢群よりも凶器を使用する者の割合がやや高い。また,使用した凶器の種類については,高齢群,非高齢群共に,刃物の割合が最も高い。高齢群では,非高齢群と比べてその他(ロープ,タオル等)の割合が高く,鈍器の割合が低い。
7-4-2-5図は,被害者との関係別構成比を見たものである。高齢群では,親族が約7割を占めており,非高齢群(約4割)と比べて顕著に高い。高齢群では,配偶者(元配偶者を含む。以下この節において同じ。)を被害者とするものの割合(35.4%)が最も高く,次いで,子(23.2%),知人(11.0%),隣人(9.8%)の順であり,非高齢群と比べて,親を被害者とした事案の占める割合が低かった。また,高齢群の女性14人のうち13人が親族を被害者としており,その内訳は,子(8人)及び配偶者(5人)であり,親を被害者とした者はいなかった。
7-4-2-6図は,被害者の年齢層別構成比を見たものである。高齢群は,非高齢群と比べて,被害者の年齢層が高く,高齢者が過半数を占めた。
7-4-2-7図は,犯行動機・背景(重複計上による。)を見たものである。高齢群は,問題の抱え込み(裁判書の記載から,「同情の余地がある。」,「被害者にも非がある。」と考えられる事案のうち,社会的に孤立し,他の解決方法が選択できずに一人で問題を背負い込んだことが犯行の背景となっていることを指す。「問題」の具体的な内容は他の項目と重複し得る。以下この節において同じ。)が最も高く,次いで,鬱屈した不満(その場の直接的な怒りではなく,事件前にある程度の期間,被害者に対してため込んだ不満が背景にある場合をいう。以下この節において同じ。),将来悲観・自暴自棄,家庭内トラブルの順である。非高齢群と比べて,問題の抱え込み,将来悲観・自暴自棄,無理心中,介護疲れが顕著に高く,対人トラブル(家庭外のものをいう。以下この節において同じ。),精神症状等の影響,困窮・借金等,恋愛トラブル(痴情のもつれ),金銭等目当てが低かった。また,高齢群において,通り魔・無差別はなかった。
7-4-2-8図は,殺人事犯者の心身の状況別構成比を見たものである。高齢群は,非高齢群と比べて,身体的健康問題(通常の通院程度の軽症を除く。)がある者の割合が高いが,精神的健康問題(統合失調症,発達障害等を有する者をいい,精神障害の疑いを含む。以下この節において同じ。)がある者の割合は低い。
7-4-2-9図は,被害者の心身の状況別構成比を見たものである。高齢群は,被害者の心身に障害等があるもの(「身体の障害」は,癌等の身体疾患を含む。「精神の障害」は,精神的に不安定な状況と認定されたものを含む。以下この節において同じ。)の割合が約4割と,非高齢群(12.8%)と比べて顕著に高く,また,要介護・寝たきり(要介護の認定を受けているか否かにかかわらず,介護が必要な状態をいう。以下この節において同じ。)であるものが20.7%,認知症のものが11.0%と,いずれも,非高齢群(4.6%,3.5%)と比べて高い。
7-4-2-10図は,裁判内容・実刑の刑期別構成比を見たものである。高齢群の実刑の割合は68.3%であり,非高齢群(86.2%)と比べて低く,単純全部執行猶予(23.2%),保護観察付全部執行猶予(8.5%)の割合が高い。なお,高齢群,非高齢群共,一部執行猶予の者はいなかった。死刑については,高齢群はいなかったが,非高齢群は1.8%であった。
実刑の刑期別では,高齢群は,3年以下の割合が12.5%と,非高齢群(6.6%)と比べて顕著に高く,20年を超えるものは無期懲役を含め5.4%と,非高齢群(14.8%)と比べて低かった。