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平成30年版 犯罪白書 第7編/第3章/第2節/3

3 起訴猶予
(1)人員

起訴猶予人員(過失運転致死傷等及び道交違反によるものを除く。以下この節において同じ。)及び高齢者率(起訴猶予人員に占める高齢者の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-8図のとおりである。

平成29年の起訴猶予人員のうち,高齢者は1万9,960人であり,10年(2,214人)と比べると,約9.0倍に増加した。このうち,65〜69歳の者は19年以降5,000人台から7,000人台へと緩やかな増加傾向にあるが,70歳以上の者は10年(805人)以降一貫して増加し続け,23年から1万人を超えるようになり,29年(1万2,648人)は10年の約15.7倍,20年(8,179人)の約1.5倍であった(CD-ROM参照)。

平成29年の女性の起訴猶予人員のうち,高齢者(4,846人)は,10年(466人)と比べると,約10.4倍に増加した。このうち,65〜69歳の女性の人員は,17年に1,000人を超えた後,増減を繰り返しながら緩やかな増加傾向で推移しており,29年(1,412人)は10年(287人)の約4.9倍,20年(1,104人)の約1.3倍であったところ,70歳以上の女性の人員は,同年以降もおおむね増加し続け,29年は3,434人(前年比10人増)となり,10年(179人)の約19.2倍,20年(2,312人)の約1.5倍に増加した(CD-ROM参照)。

高齢者率は,総数,女性共にこの20年間上昇傾向にあり,平成29年は,総数で18.0%,女性で24.8%であった。

7-3-2-8図 起訴猶予人員(年齢層別)・高齢者率の推移(総数・女性別)
7-3-2-8図 起訴猶予人員(年齢層別)・高齢者率の推移(総数・女性別)
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起訴猶予率(過失運転致死傷等及び道交違反によるものを除く。以下この節において同じ。)の推移(最近20年間)を,総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-9図<1>のとおりである。

起訴猶予率については,過去20年間一貫して,総数,女性共,65歳未満の者と比べて,65〜69歳の者,70歳以上の者のいずれも高い。高齢者は,平成16,17年頃まで緩やかに上昇していたところ,18年,19年と低下し,以後は緩やかな上昇傾向にある。

刑法犯に限ると,7-3-2-9図<2>のとおりであり,高齢者は,18年から20年にかけての低下が顕著である一方,その後の上昇傾向は極めて緩やかである。

7-3-2-9図 起訴猶予率の推移(総数・女性別,年齢層別)
7-3-2-9図 起訴猶予率の推移(総数・女性別,年齢層別)
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(2)罪名

平成29年の起訴猶予率を罪名別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-10図のとおりである。

刑法犯及び特別法犯(道交違反によるものを除く。)における65〜69歳の者及び70歳以上の者の起訴猶予率は,他の年齢層より高く,特に70歳以上の者では全体の起訴猶予率よりも14.4pt高い。

このうち刑法犯で見ると,件数の多い窃盗の後記の状況を受けて,高齢者は,全体で他の年齢層より高く,特に70歳以上の者では全体の起訴猶予率よりも14.1pt高い。

罪名別で見ると,65〜69歳の者の起訴猶予率は,傷害において20〜29歳の者に次いで低く,暴行において他の年齢層と比べて低いのに対し,70歳以上の者の起訴猶予率は,傷害及び暴行共,他の年齢層よりも高い。

窃盗について,更に男女別に見ると,70歳以上の男性の起訴猶予率は,他の年齢層よりも顕著に高いのに対し,女性では,年齢層による起訴猶予率の差は男性ほど大きくない。なお,平成17年(窃盗罪に罰金刑が新設された18年の前年)の起訴猶予率と比較すると,同年の高齢者全体が74.4%,65〜69歳の男性が60.9%,70歳以上の男性が76.0%,65〜69歳の女性が80.7%及び70歳以上の女性が87.3%であったのに対し,29年は,高齢者全体が64.3%(17年比10.1pt低下),65〜69歳の男性が54.9%(同6.0pt低下),70歳以上の男性が67.4%(同8.7pt低下),65〜69歳の女性が63.0%(同17.7pt低下)及び70歳以上の女性が68.6%(同18.8pt低下)と,いずれも低下した(検察統計年報による。)。

7-3-2-10図 起訴猶予率(罪名別,年齢層別)
7-3-2-10図 起訴猶予率(罪名別,年齢層別)
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